見出し画像

忍殺TRPGリプレイ小説【アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー】

邦題:俺は車に恋してる(I'm in Love with My Car)

これは、ニンジャスレイヤーTRPGのオリジナルソロシナリオ、ラブサバイブ=サン作「【洗車ドー大作戦!】」を元にしたリプレイ小説です。だいぶ自由に改変していますが、一応ネタバレにご注意下さい。

ニンジャ総合目次

今回挑むのはソウカイヤのサンシタニンジャ……すなわち、彼です。

画像1

◆ファイアシーフ(種別:ニンジャ)
カラテ       4    体力        4
ニューロン     6    精神力       6
ワザマエ      3>4  脚力        2
ジツ        2    万札       18>15
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
☆カトン・ジツ
▶テッコ:カラテ判定ダイス+1、回避ダイス+1
○ブラインドタッチ:キーボード使用ハッキング時に判定ダイス+1
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失

能力値合計:17>18 回避ダイス:7
前回の冒険でついに野良ニンジャをやめ、ソウカイヤに所属することになりました。カンオケ・ドージョーをあてがわれたので概念的に1日ワザマエ鍛錬を行い、出目[5]で成功、4になりました。

画像3

重金属酸性雨が弱く降る、ある日の午後。ネオサイタマを牛耳る犯罪組織、ソウカイ・シンジケートの本拠地たるトコロザワ・ピラーの正門前で、一人の男が手持ち無沙汰げに立っていた。彼の名はファイアシーフ。野良ニンジャをやめてシンジケートの構成員となり、初ミッションを命じられた。

ブロロロロ……。やがてエンジン音が近づいてきた。間違いない。上司ソニックブームの高級ヤクザベンツだ。「ドーモ、ソニックブーム=サン。ファイアシーフです」「ドーモ、ファイアシーフ=サン。出迎えご苦労」車から降りた彼は、ファイアシーフに万札3枚と車のキーを投げ渡した。

「……え?」くれるというのか。そんなはずもない。「ミッションだ。俺様のクルマを洗っておけ。傷つけたら承知しねえぞ、エエッ?」ファイアシーフは飲み込めない。「え、待って下さい!俺が?モータルやクローンヤクザでなく?」「そうだ、テメエがだ。洗車場はピラーの裏手だ。ナビを見ろ」

ソニックブームはポンとファイアシーフの肩を叩き、クローンヤクザたちを連れてピラーの中へ立ち去った。残されたファイアシーフは困惑したまま、周囲を見回す。ヤクザベンツの中には誰もいない。キーは確かに預かっている。「……やれってか。やるしかねえよなあ、ミッションならなあ」

画像4

ファイアシーフは首を傾げながらもヤクザベンツに乗り込み、キーを回して発進する。ナビゲーションモニタが周辺の地理を表示し、洗車場へのルートを指し示す。大した距離ではないが、これだけ立派なクルマを運転するのは初めてだ。やや誇らしい気分になる。ヤクザとして出世すれば、自分も。

ところで……治安の悪いネオサイタマでは、高級車には高度なセキュリティシステムが搭載されている。盗難など目論めば、即座に警備員が飛んできてヨタモノは棒で叩かれる。このヤクザベンツにも無論導入されているが……キーが手元にあれば、セキュリティシステムのハッキングは可能なのだ。

ファイアシーフにはモータル時代から経験がある。ヤクザベンツに手を出したことはないが、仕組みは同じだ。ムズムズと手が動く。懐にウイルス入りフロッピーもある。……いや待て、自分は何をしようとしている?バレれば大目玉を食うし、そんなことをする意味はない……はずだ。

ニューロン判定、難易度EASY。[124456]=成功。誘惑を振り切る。

失敗すれば警報が鳴り、警備員が飛んできて叩きのめされる。そもそもソニックブームに殺される。……ふと助手席の足元を見ると、ジュラルミンケースが無造作に置いてある。いかにも大金が入っていそうだ。

ニューロン判定、難易度EASY。[133445]=成功。誘惑を振り切る。

……忘れ物だ。持ち去ったら見つかって殺されるに決まっている。つまりアレだ、そういう罠だ。自分を試そうというのだ。なるほど。ファイアシーフは無言で頭を振り、誘惑を振り切る。洗車場まではもう少しだ。

画像5

ヤクザベンツは地下駐車場を進み、何事もなく洗車場に到着した。ファイアシーフはしめやかに洗車スペースへ車を進め……何かを発見した。「むっ」ジャー……ザブザブ……洗車スペースの一つに、先客がいた。PVCビキニ姿の豊満な美女が、泡にまみれながらヤクザベンツを洗っているではないか。

ファイアシーフは鼻の下を伸ばしながらその隣へ駐車した。そして車を降りると彼女にアイサツした。「ドーモ、ファイアシーフです」「ドーモ、ファイアシーフ=サン。ライトニングウォーカーです」美女もニンジャである。「あれ、あなたもヤクザベンツの洗車ですか」「ええ、ミッションで」

一人寂しく洗車するより、仲間がいた方がよい。豊満美女ならなおさらだ。この前下水道で似たような女ニンジャと共闘したような気がするが……。「汚れを落とすだけじゃなくて、ピカピカに磨き上げれば喜ばれますよ!」

ルール:まず1D6を振り、出目をマイナスした数値を最初の「洗車値」とする。続いて体力か精神力を1消費し、ワザマエ判定(難易度NORMAL)を行う。精神力をさらに消費して自動成功も可能だ。判定に成功すれば洗車値が+1され、出目6が2つ以上あればさらに+1。判定に失敗したら洗車値は上昇しない。これを繰り返して洗車値を0以上にすればクリアだ。
洗車を2度行うたびに1D6を振り、なんらかのイベントが起きる。開始時に万札1を支払うと洗剤を購入し、判定難易度をEASYにできる。体力か精神力が0になったら昏倒する。面倒であれば必要なだけの万札を支払うことで全自動洗車機を使って洗車値を0にできる(体力や精神力は消費しない)。
さらにピカピカに磨き上げれば報酬も貰えるが、判定の基本難易度はHARDになる。洗剤の効果は無効になり、万札2でワックスを購入すると難易度をNORMALに下げられる。洗浄値の上限は10。

洗浄開始

最初の洗車値は1D6を振って-2だ。体力4、精神力6、万札18あるので磨き上げるには充分。

1ターン目

「じゃ、まずは全自動洗車機を使うか……って、万札使うのかよ!?」法外な高さだ。高級車専用ということか、これも試練か。「……まあいいか、さっきのは経費で、報酬は別払いとかだろ」万札2枚を使い全自動洗車機を動かす。ウイーン……ザババババ……ヤクザベンツは見る間に洗浄されていく。

残り万札16、洗浄値0。

2ターン目

「よおし、と……」ここからが本番だ。自販機でワックスを万札2枚で購入し(これまた法外な値段だ)、ライトニングウォーカーの方をチラチラ見ながらキアイを入れる。「行くぞ!」

残り万札14。ワザマエ判定、難易度NORMAL。4D6で[4556]=成功。現在洗浄値1。続いて1D6でイベントを起こすと[6]、隣の女ニンジャがワックスか洗剤をくれるか、所持している場合は手伝ってくれる。洗浄値が2に上昇。だが女ニンジャは洗車を終えて立ち去ってしまう。

「こっちは終わりましたし、手伝いますよ」「アリガトゴザイマス!」困った時は助け合いだ。ヤクザベンツは二人にワックスをかけられ、磨き上げられていく。「……じゃ、私はこれで。頑張って下さい」女ニンジャは笑って礼をすると、彼女が洗っていた車を動かし洗車場を立ち去った。

「むう……」結局一人だ。ファイアシーフは眉根を寄せ、メンポの下で下唇を噛みながら、ヤクザベンツと対峙する。ベンツ、洗うべし!

3ターン目

「イヤーッ!」ファイアシーフのワックスがけ!

精神力1消費、残り5。4D6で[4555]=成功。洗浄値3。

4ターン目

「イヤーッ!」

精神力残り4。[1555]=成功。洗浄値4。イベントダイスは1、何もなし。

5ターン目

「イヤーッ!」

精神力残り3。[1233]=失敗。

6ターン目

「イヤーッ!」

体力を消費、残り3。[2355]=成功。洗浄値5。イベントダイスは6、女ニンジャはもういないので何もなし。

7ターン目

「イヤーッ!」

体力を消費、残り2。[1244]=成功。洗浄値6。

8ターン目

「イヤーッ!」

精神力を消費、残り2。[1343]=成功。洗浄値7。イベントダイスは4。

「ハァーッ、ハァーッ……」無心に磨き上げるうちに、ファイアシーフはだいぶ疲労してきた。これぐらいが潮時か。

洗浄終了

……その時!

ビュオン!何かがヤクザベンツめがけて飛来!ファイアシーフの鋭敏なニンジャ視力はそれをとらえた。泥団子だ!「エッ」このままでは危険!

ワザマエ判定、難易度NORMAL。[2666]=成功。

「イヤーッ!」ファイアシーフは思わずキックを繰り出し泥団子を蹴り飛ばす!ヤクザベンツには泥一つつかず!タツジン!「な……だ、誰だッコラーッ!?ザッケンナコラー!?」泥団子が飛んできたあたりを睨みつけ、気配を探る。柱の陰から現れたのは、生意気そうな子供。だが、ニンジャだ。

「ドーモ、アズラーイールです」

画像2

「ど、ドーモ、ファイアシーフです」アイサツを返す。「ソウカイヤのニンジャか」「まあね。洗車は終わった?」「あ、ああ。さっきの泥団子はなんだ?」「まあいいじゃない。それより、そのベンツの中のアタッシュケースを持って来いってソニックブーム=サンに言われたんだ。渡してくれる?」

アズラーイールはニヤニヤ笑いながら、掌を上に向けて右手を伸ばす。ファイアシーフは訝しんだ。

ニューロン判定、難易度NORMAL。[333444]=成功。

「……ちょっと待て。ソニックブーム=サンに確認する」ファイアシーフは首筋に埋め込まれたIRC通信機でソニックブームを呼び出す。『おう、俺様だ』「ドーモ、ファイアシーフです。洗車は終わりました。目の前にアズラーイールってニンジャのガキがいますが、ケースを渡せと……」

『そうかそうか。渡すな。そのガキを載せてピラーの正面玄関まで戻って来い』「ハイヨロコンデー」通信は切れた。ファイアシーフはアズラーイールを睨み、鼻を鳴らす。「……っていう、試験か」「そういうこと。エージェントには状況判断力がないとね。オツカレサマデシタ」

トコロザワ・ピラー正面玄関へ戻ったファイアシーフとアズラーイールは、待っていたソニックブームにアイサツする。「よーし、まあまあ上出来だ。ほらよ」ファイアシーフへ万札が投げ渡される。

洗浄値7、万札7。最初の万札3と合わせて10だが、全自動洗車機とワックスに万札4を使ったので差し引き6。万札21になった。

「あれ、ぼくには?」アズラーイールが首を傾げた。「こいつを騙せたら、だ。失敗したから何もねえよ。行きな」「チェッ」アズラーイールは舌打ちし、トコロザワ・ピラーの中へ立ち去った。「以上、ミッション終了だ。テメエの手癖の悪さが直ってるかどうか、見定める程度のオツカイだな」

ソニックブームはアタッシュケースを車から取り出し、開く。中身は万札やトロ粉末ではなく、シュレッダーにかけられた紙くずだ。「テメエの首筋にインプラントされたIRC通信機はなァ、首輪で発信機で盗聴機だ。テメエがクソしてる時も、オイランと前後してる時も、言動は全部筒抜けだ」

ファイアシーフは思わず首筋を触る。「ソウカイヤのニンジャにはだいたいソレがつけられる。バッジにもな。で、テメエがヌケニンでも企もうもんなら首筋がBOMB!で即死だ。お行儀よくしろよ。ワカッタカ」「アッハイ」忠誠心が薄くとも、ソウカイヤからのヌケニンは少ない。これが理由だ。

「カネを払えばカンオケ・ドージョーから出して、安アパートに叩き込んでやる。その前に正式ミッションを見繕っとくか。……じゃ、帰っていいぜ」「アッハイ、アリガトゴザイマシタ」ファイアシーフは頭を下げ、ヤクザベンツを運転して走り去るソニックブームを見送った。身も心もヘトヘトだ。

「……帰るか」外せない首輪を触り、ため息をつく。こうなれば覚悟を決めて、ソウカイ・ニンジャとして生きていくしかあるまい。そして、両手にはヤクザベンツのハンドルの感触がまだ残っている。背にはシートの感触が。いつかは自分もカネを稼ぎ、あのような高級車を手に入れたいものだ……。

【アイム・イン・ラヴ・ウィズ・マイ・カー】終わり

リザルトな

報酬:万札10→6、余暇1日
◆ファイアシーフ(種別:ニンジャ)
カラテ       4    体力        4
ニューロン     6    精神力       6
ワザマエ      4    脚力        2
ジツ        2    万札       15>21
DKK       0    名声        0

◇装備や特記事項
☆カトン・ジツ
▶テッコ:カラテ判定ダイス+1、回避ダイス+1
○ブラインドタッチ:キーボード使用ハッキング時に判定ダイス+1
◆ウィルス入りフロッピー:ハッキング難易度-1、使用後D6で3以下が出ると喪失

能力値合計:18 回避ダイス:7

つのにサポートすると、あなたには非常な幸福が舞い込みます。数種類のリアクションコメントも表示されます。