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聖杯戦争候補作

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つのが某所に投下した亜種聖杯戦争の候補作。落選多数。 鯖や鱒はご自由にお使い下さい。
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#二次創作

【聖杯戦争候補作】Walk Like an Egyptian

嘆くな、兄弟、我が片割れよ。 私と共にいることを望め。来世のことは後回しにせよ。 お前が葬られる時に、来世への願いは初めて叶うのだ。 その時には、私も降りていき、一つの家に共に住もう。 ―――『ある男とその魂との対話』 ○ 夜。空には、満月。 その少年は、森の中へ一人分け入って行く。 制服から、この冬木市に存在する「穂群原学園」の男子生徒と分かる。 ただ、上着の前を開け、中のシャツもボタンをいくつか開け、だらしなく着崩している。首元にはアクセサリー。耳を隠す程

【聖杯戦争候補作】Open Invitation

夕刻。 彼女が自分と世界の不自然さに気づき、記憶を取り戻したのは、薄暗い廃工場の倉庫だった。悪夢のような辛い記憶だ。取り戻さなかった方が、幸福だったに違いない。憂いに満ちた瞳から、はらはらと涙がこぼれ落ちる。 すらりとした美女。長い黒髪、白い肌、長い睫毛。妖艶で、儚げで、不穏な雰囲気を漂わせる。乱れた制服を整え、埃をはたく。赤い唇をかすかに歪め、彼女は呟く。 「ふふ。聖杯戦争。おのれの望みを叶えるために、殺し合え、やて」 聖杯。それを手にすれば、なんでも望みが叶う。他

【聖杯戦争候補作】この世全ての悪

宵闇の空に暗雲が垂れ込め、ぽつぽつと雨が降り出す。 雨は、地上に漂う瘴気に触れ、音もなく蒸発した。 立ち上る瘴気は暗雲を飲み込み、降り注ぐ雨を有毒の酸性雨に変えていく。 轟音とともに黒い稲妻が走り、落雷を受けた樹木が焼き尽くされる。 そこから得体の知れぬ蟲たちが生じ、這いずりながら闇の中へ消える。 路上に立つ少女は―――瘴気の源は―――肩を震わせ、嗤っている。 「ふふ……ふふふふ…………」 少女。そう、少女だ。外見上は。 小柄で黒髪、赤い瞳に褐色の肌。胸は豊か。露出

【聖杯戦争候補作】悪党たちの交響曲

悪はわたしにからみつき、数えきれません。 わたしは自分の罪に捕えられ、何も見えなくなりました。 その数は髪の毛よりも多く、わたしは心挫けています。                           ―――詩篇40:13 ◆ 「……エルフは神を信じない、っちゅうに」 夕刻。スノーフィールド中心部からやや外れた、閑静な住宅街。昔の商館を移築・改装したアンティークショップ。 目つきの悪い痩せた男が、館の西の窓辺でたそがれ、ぼやいている。一人暮らしの、館の主人だ。黄色

【聖杯戦争候補作】ホーリー・グレイル・ヴァーサス・フューリー・ソウル

◆◆◆◆◆◆◆ 010001010110月11010010下10100010101検101101001閲01 「こんなのってないぞ……聖杯戦争いい加減にしろよ……」 痩せて小柄、黒髪でショートボブ。永久脱毛した眉毛の代わりにイバラめいたタトゥー。テックジャケットにジーンズ、エンジニアブーツ。首には「地獄お」とレタリングされた赤いマフラー。彼女の名は、エーリアス・ディクタス。今、彼女に生命の危機が迫っている! 「■■■■■■■■■■■■!」 ナムサン!狂乱の叫びと共にエ

つのの制作物についてのガイドライン(仮)

ドーモ、三宅つのです。第一回逆噴射小説大賞が終わってから1週間近く、早速候補作の続編を書いておられるパルパー(パルプする人の意か)も結構おられ、つのもやや焦りを感じます。構想はありますしぼちぼちやってますが、なにしろ21作品も考えなしに投下したため、それぞれを完結させるとなると来年ぐらいまでかかりそうな気がします。自分で偉そうなことを言っておいてやらないというのもつのの尊厳に関わるので、どれかはやります。期待せずにお待ち下さい。逆プラ作品の新規まとめは、つのはもう充分書きまし

【聖杯戦争候補作】兆し

モンスター【英:monster】 怪物、化物。語源はラテン語「monstrum(不可思議なもの、奇怪なもの、正体不明の怪物、驚異)」で、動詞「monere(警告、忠告、予兆)」に遡る。 古代人にとって、驚くべき出来事や奇怪な生き物の出現は、神々から人間への警告であり、何か異常なことの前兆であると考えられていた。 monition(警告)、premonition(予告)、monitor(忠告者・監視者)、monument(記念碑)なども、同じ語源から派生している。  ◆ ◇

旧き文明の地であるロワ海と聖杯海の諸相について

おれだ。ゾンビじゃない。なんか死んだがロックの力で復活した。もはやおれはジーザスも同然だ。 さて……ようやく銃撃戦も終わり、時間に余裕が出来た。そろそろおれの古巣のひとつである「ロワ海」と「聖杯海」について語るときが来たようだ。 これを読んでるやつの多くはとっくに知っているだろうが、知らないやつもいるだろうし、おれの状況整理のための備忘録でもある。だらだらやる。 おまえは『バトル・ロワイアル』を知っているか? 20世紀末に出現したヤバイ級パルプ小説で、社会問題にもなり、数