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聖杯戦争候補作

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つのが某所に投下した亜種聖杯戦争の候補作。落選多数。 鯖や鱒はご自由にお使い下さい。
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2019年2月の記事一覧

【聖杯戦争候補作】Tender Sugar

ボクと契約して、魔法少女になって欲しいんだ。 ボクは君たちの願いごとを、なんでもひとつ叶えてあげる。 なんだってかまわない。どんな奇跡だって起こしてあげられるよ。 でも、それと引き換えに出来上がるのがソウルジェム。 この石を手にしたものは、魔女と戦う使命を課されるんだ。 ○ 最近、私は同じ夢を見る。 誰か知らない女の子が病室にいて、ベッドの上に座ったまま本を読んだり、食事をしたりする姿を、ただ眺める夢。 その子は時々、私に笑いかけて何かを言う。だけど私には、その声が聞こえ

【聖杯戦争候補作】Pink Elephants on Parade

夜。ネオン煌めく、見滝原の歓楽街。その片隅の路地裏。派手な格好をした美女がため息を吐いている。警察帽にピンクの長髪、豊満なバストとヒップ、露出度の高い服装にハイヒール。目鼻立ちは日本人ではなさそうだ。 「はぁ……またまた、とんでもないことに巻き込まれちまったみたいね……」 彼女はたった今記憶を取り戻し、現状を把握したところだ。道で拾ったこの宝石に、こんな大それた力があったとは。 ジャパン。いい国だ。カネはあるし治安は良い。自分みたいなワルには、ちと退屈だが。いつの間にや

【聖杯戦争候補作】Two Heads are Better than One

夜。見滝原に聳える高級マンションの一室。シャワーの音、乙女の影。 「♪んふふー・んふふー・ふんふふふー……ふふふー・ふふふー・ふふんふふー……」 鼻歌を歌いながらシャワーを浴びる乙女。読者の皆様にはシルエットだけでご勘弁頂きたい。やがてシャワーは止まる。……しばらくして、バスローブを纏った乙女がベッドルームへ。黒髪の東洋人。なかなかの美少女だ。年は16、17といったところか。 「ふわーあ……。そうだ、寝る前に、アレをしましょう」 はらりとバスローブをはだけ、肩から背中

【聖杯戦争候補作】Disposable Heroes

「……以上の件について、報告を終わります。では……」 見滝原を一望できる超高層ビルの一室。大きく重厚な机と立派な椅子に座るのは、40がらみの偉丈夫。眉目秀麗な男性秘書の報告を聞いていたその男は、差し出された書類に判を押した。 「ご苦労。下がってよろしい」 「はい。それでは、失礼致します。CEO」 秘書は、男の放つ威圧感に冷や汗をかきつつ、完璧な所作でお辞儀し、退室した。 男は視線を背後の窓の外、夕景に移す。記憶はあるのに、記憶にない街だ。 立ち並ぶ高層ビル。最先端技術を

【聖杯戦争候補作】Umbra Nigra

■ 山の中で泣いている子供が見える。 回転する紋様。 床を埋め尽くす無数の白骨。 母の死。 海辺。 電車。 禍々しくうねる空。立ち並ぶ石碑。奇怪なオブジェ。……いつか、見たことがある夢。 【おお……あなたには、すごい力が秘められているのね。素晴らしいわ】 知らない女性の声。 地下の町。 墓室。 凍った湖。 密林の中の村。 海。 生首。 【その力を用いれば……あなたは……】 声が遠ざかる。 禍々しくうねる空が、裂ける。そこから光が――――― ■ 「……おか

【聖杯戦争候補作】You Only Die Once

目が回るほど忙しい毎日。なにかを忘れている気がする。 発展著しい見滝原に転勤して、仕事や収入も増えたが、自宅に帰れる日数は減った。故郷への電話やメールも、たまにしか送れない。去年は何度里帰りできたか。そろそろ嫁でももらう歳だ。 「帰らにゃ」 ぽつり、と声が出る。どこへ。自宅の賃貸アパートか。それとも実家か。ああ、たぶん実家の方だ。いや。ここは自分のいる場所で、みんなも自分を頼りにしている。投げ出してしまうわけにはいかん。古い価値観と笑わば笑え。そう育てられて来た男だ。実

【聖杯戦争候補作】United We Stand

「ライダー。おれの望みは――――『おれのおやじを殺す』ことだ」 夕刻の自室。喚び出したばかりの己のサーヴァントに望みを問われ、学生服の男、『虹村形兆』は、そう告げた。万能の願望器にかける望みとしては、あまりにささやかな、個人的な願い。 ライダーは少し沈黙した後、口を開く。 「……恨みでも、あるのか」 無表情のまま、ふん、と鼻を鳴らす形兆。見知らぬ男だが、これから命を託す相棒だ。しっかり説明しておかねば、相手も納得はできまい。特に善良な奴であれば。手の中の宝石、ソウルジェ

【聖杯戦争候補作】Eye of the Beholder

■ 燃え盛る炎から、巨大な怪物が産み落とされる。かつて世界を滅ぼした神が。ああ、なんと、素晴らしい。 「ホラホラ、化物が動きはじめたぞ。お前がこいつの産みの親ってわけさ」 ざまあみろ。救世主ヅラして、お前は怪物を世に放したのだ。なにが救済だ。なにが愛だ。くたばっちまえ。くそくらえ。弟と同じことをいいやがって。来世も再生もありはしない。世界は滅び、人間は簡単に死ぬ。死ねば終わりだ。それまでに何をするかだ。 「貴様をひきむしって、はずかしめてやる。その上でこいつをくれてや