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【歳時記と落語】卯の日詣り

2020年6月29日は、旧暦5月9日で卯の日です。この5月最初の卯の日には大阪の住吉大社の「卯之葉神事」が行われていました。今は新暦の5月に行われています。

この「卯之葉神事」は、住吉大社が、神功皇后摂政の11年、西暦で言いますと211年の辛卯年卯月上卯日に開かれたことを記念するものです。

この日は特別に卯の葉、つまりウツギの葉を使った玉串を捧げます。また、石舞台で舞楽が奉納されます。

この日にお詣りするんを俗に「卯の日詣り」と言いました。

それがそのまま演題になっておりますんが、「卯の日詣り」です。

船場のさる旦さん、金満家で風流人ですが、歳いってから所謂「せむし」というのになりはった。

さて、旦さんのところにちょくちょく顔を出す男に、床屋の磯七というのがございます。十人並みに優れたええ男で、芸事一通りもこなす上に、人の機嫌を取らせたら、太鼓持ちも同様というエライやつです。

この磯七が旦さんのところへやってまいりまして、卯の日なんで住吉さんへお詣りでもと誘います。もちろん帰りにご相伴に与ろうという魂胆です。

「せむし」の旦さんと色男の磯七、女子衆がどちらへつくかは、旦さんもようわかっておりますんで、断ります。

すると磯七、洗濯糊に梅干しの中身の果肉を混ぜたもんをこしらえまして、これを顔一面に塗り、おまけに綿かなんぞをちぎって、所々に貼り付けます。「かったい」、癩病ですな、今でいうハンセン病でございますが、そんなような顔に仕上がります。

まあ、それで道中悪ふざけをしようという噺ですが、これはもう今は高座にかかることはおまへんやろうなと思います。

昔はこんなんやったという資料的価値として残しておくんがええんやないかと思います。

もう一つ、これもあんまりやらんようになった「箒屋娘」にも「卯の日詣り」が出てまいります。

こちらでは、さるお店の若旦那が番頭に勧められて「卯の日詣り」に出かけて、箒屋の娘を見初めるという事になっております。

この「箒屋娘」、今は若旦那と娘が結婚して、子供が生まれ、娘の父親も病に臥せっておったものの孫の顔を見て旅立てました、というまあま「おめでたい」終わり方で、サゲがおまへんのやが、元々は「箒屋の娘やさかいに逆さにしたら帰るはず」という、サゲがついてました。

箒を逆さにしたら客が帰るというマジナイももう分からんようになりましたし、そもそもサゲがかなりの「バレ噺」なので敬遠されて、やらんようになったようです。


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