見出し画像

手間暇かけたもの、高価なものは良いもの?「恣意の一貫性」【マーケティング】

学生時代にインドに一人旅をしたときのこと。現地のとある土産物屋に立ち寄った際に店員から「この絨毯はハンドメイドだからすごく良いものだ」と高価な絨毯を薦められました。確かに柄がとても複雑できれいな絨毯、いかにも高そうな代物でした。

せっかく異国の地に来たのだし柄も気に入ったのですが、その時は手持ちの現金が足りず、泣く泣くその絨毯を買うことをあきらめました。

手間をかけたものは良いもの?

日本に帰ってきてからもその絨毯がすこし心残りでした。めったに手に入らないような気がするし現地の職人が手作りで手間暇つくったのだろうと思うと買っておけばよかったなぁと思っていました。

インドに詳しい知人にそんな話をしたところ「インドの土産物はハンドメイドの物がほとんどだけど、それは人件費が安いからだよ」と言われました。要するに機械を導入するよりも人件費の安い手作業の方が製造コストが安いということらしい。ハンドメイドってすごく良さそうだという先入観を持っていたんですがそうとも限りませんね。

高いのもは良いもの?

アメリカ・デューク大学教授ダン・アリエリー氏の著書『予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』に「黒真珠」についてのエピソードがとても面白い。

真珠王と言われたサルバドール・アサエル氏は、世の中では存在がほとんど知られていなかった黒い真珠を売り出そうとしたのですが、最初はひとつも売れませんでした。そこで、友人の宝石商ハリー・ウィンストン氏を訪ね、ウィンストン氏のニューヨーク5番街にある店のショーウィンドウにとんでもない値札をつけて置いてもらうことにしました。その後アサエル氏は高級雑誌にダイヤモンド・ルビー・エメラルドと黒真珠を並べて一面広告を掲載しました。ほどなくして人々は黒真珠が高級品であると認識するようになったのです。

つまり、それまで無価値であったものでも高級品であるかのように演出して高額な値札をつけると、人はその商品の価値を認めるようになるということです。値段が高いものは良いものだという先入観をうまく使って自分の商品の品質が高いというイメージを植え付けたんですね。

恣意の一貫性

この2つの事例は「値段が高いものは良いもの」や「手間暇かけたハンドメイドの商品は良いもの」という先入観を利用しています。過去の経験や知識からほとんどの人がそう思い込んでいるのではないでしょうか。

そして実は価格についても私たちの心理的なクセをうまく利用するテクニックが隠されています。売り手が恣意的に決めた価格でも、一度買い手にそのイメージを植え付けると後々の意思決定にまで影響を与え続ける「恣意の一貫性」というものです。

インドの土産物屋ではハンドメイドだから値段が高いと言われた商品がなぜかとても良いものに思えたし、ニューヨークのショーウィンドウで法外な値札がついた見たこともない黒い真珠が富裕層に売れた。最初に高い値段を提示されるとそれが基準となり、その後の価値判断に影響を与えます。

商品の値段はとても重要です。一度付けた値段は変えるのが難しい。安すぎる値段をつけてしまうと安物だと思われかねない。商品の価値を高めて高級品として売りたいのであれば相応の値段をつけて高級なものであるという演出をすべき。自社商品の値段を決めるとき、お客様に見積書をつくっているとき、そんなことをいろいろと考えながら値段について考えてみたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?