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「世界投資家ランキング」1位、The king of VCが語る、投資の価値観

こんにちは、夏歓です。

前日、Forbes Japanの記事「「世界投資家ランキング」1位にセコイア中国代表、2年連続」https://forbesjapan.com/articles/detail/26577/1/1/1?s=nsがNewsPicksで皆さんに結構pickされました。

沈南鵬(Neil Shen、以下は「シェン」と呼びます)のこと、投資した企業のこと、知ってる日本人が少ないです。この記事には、シェンの深い思考力や市場への判断、投資の要点など一切紹介されませんでした。つまり、創業者と投資者の日本人の方々にちっとも役に立ってない記事です。

これはしょうがないことです。銀行家から連続起業家、そして投資家へとキャリアを経て、インターネット黄金時代及びモバイルインタネット黄金時代のチャンスを捉えた人物は全世界的にも少ないです。シェンの言葉や考えが深くて、中国人にも理解できないのは普通で、全部理解する上で日本人の方々に伝われる人はこの世にいないと思います。現在、ちょっと書いてみると思った自分も、恐縮で、彼に対して凄く失礼ではないかと思ってます。

シェン、1967年中国浙江省海寧市に生まれ(「海寧市」は筆者の出身地であり「嘉興市」に所属、「同郷の人」です)、上海育ち、アメリカ就職(シティバンク&リーマン・ブラザーズ)、1999年に上海で共同創業者として「Ctrip」を立ち上げ、2002年に共同創業者として「Home Inn」を立ち上げ、2005年にセコイアキャピタル・チャイナ(Sequoia Capital China、以下は「セコイア」と呼びます)中国代表に就任。

「Ctrip」はオンライン旅行会社(Online Travel Agency、OTA)で、1999年に設立され、2003年にNASDAQに上場し、2019年4月11日の時点で、時価総額は248.9億ドル(約2兆7653億)です。

「Home Inn」は格安ホテルチェーンで、2002年に設立され、2006年にNASDAQに上場し、2016年にバイアウトされました。2017年度、Home Innの売上は約70億元(約1155億円)でした。

シェンは投資家に転身になった2005年に、初出資した企業は当時設立したばかりの「奇虎360」で、2011年にNYSEに上場し、2016年にMBOされました。2017年度、「奇虎360」の売上は約122.38億元(約2025.5億円)でした。2005年に700万ドルの投資額は、6年間で72倍のリターンになりました。

セコイアキャピタル・チャイナが設立されたこの14年間に、出資した企業の中、すでに上場になった企業の時価総額、合わせて6200億ドル(約68兆8820億円、2019年2月の時点で)、日本企業時価総額ランキング上位6社の総額と同等です。

評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ企業、「ユニコーン企業」と呼ばれる181社の中には、セコイアが出資した企業は50社があります。中国人の生活には、もう既にセコイアが出資した企業から離れられないです。

                                             中国人普通の一日
07:30    朝食を取りながら、「Toutiao(バイトダンス)」でニュースをチェック
            「雪球」でアメリカの株価をチェック
    女の子の日で、「大姨妈」アプリで体調を記録
08:00   駅までシェア自転車「Mobike」を利用
08:20   通勤中、「iQIYI」「TikTok」で動画を見る
    「豆瓣」で勧めれた「BONA」映画制作社の新作映画を気になる
    母から格安Eコマース「拼多多(Pinduoduo)」のインクが飛んでくる
09:30   会社に到着、オフィスに置いてる無人販売機「猩便利」でコーヒを購入
            「中通配達」から荷物が届く
11:00   「Zoom」でビデオ会議を開始
             人事職は「北森雲」という人事管理システムで仕事する
             営業職は「销售易」というセールス管理システムで仕事する
12:00    ランチに「餓了麼(ele.me)」で出前を頼み
12:30    昼休み中、「JD.COM」で買い物
             隣のゆとり世代は購入した「DJI」のドローンを見せびらかす
             こいつ、「NIO」のEV SUVも予約したらしい、むかつく…
14:00  「美団点評(Meituan-Dianping)」で友達とディナーのお店を決める
19:00    友達と食事中に次の旅行先を「途牛(Tuninu)」で調べながら相談する
    いくつか観光地をノート管理アプリ「印象筆記(Evernote)」で記録
    携帯が電池切れ、「小電」のシェア充電器を利用
    同時に、帰宅した子供は「VIPKID」で英語の勉強するはずですが、
    「快看漫画」アプリでこっそり漫画を見てます
21:00    ちょっと食べ過ぎ、24時間ジム「超级猩猩」で軽く運動
22:00    帰りは「滴滴(Didi)」でタクシーを呼ぶ
             ドライバーは「高徳地図」から勧めた路線で家まで運伝
             自家用車の利用率が低い、中古車取引サイド「Guazi」で売ろうと思う
00:00   今日一日使った金額を「随手记」で記帳
             ソーシャルアプリ「MOMO」から変な男性の友達申請が来ました、無視
    ※ 注釈:「…」には全部セコイアが出資した企業です。

筆者が来日前には、初期メンバーとして、元「IDG Capital」パートナーの毛丞宇氏が独立して立ち上げた「雲啓資本YUNQI PARTNERS」で三年間半働きました。「IDG Capital」は1999年に「Ctrip」に出資し、4年間23倍のリターンを得た大手ベンチャーキャピタルです。毛丞宇氏は1999年にIDG Capitalに入社し、初めてデューデリジェンスを行ったのはちょうど「Ctrip」社でした。
筆者が「雲啓資本YUNQI PARTNERS」で勤めてた三年間半に、ボスも私も「セコイア」と接触したことがありますが、「共同出資」はありませんでした。
という訳で、筆者の元ボスとシェンは20年前から知ってた人ですが、一緒に飲んだりするほど仲がいいとは思いません。

シェンと会談

最近、シェンはある記者の取材を受けまして、「観念」と「価値観」について色々述べました。今日はこの一部分の内容及び筆者の理解をちょっと書いてみます。

記者:中国経済減速及びセコイアのAUM(Assets under management、運用資産残高)増加の現時点で、どうやってリターンを保証しますか?
シェン:トップ企業に出資金を増加すること(Double-down、あるいはTriple-down)。理解出来た分野に投資を繰り返します。そして、もっとアーリーステージの企業に投資すること。

記者:セコイアキャピタル・チャイナが設立されたこの14年間のディストリビューションを教えていただけませんか。
シェン:Sector  expansion(産業拡張)、Stage  expansion(ステージ拡張)、Currency expansion(人民元ファンド増加)、この三つです。
2007年や2008年の頃、ベンチャーキャピタルはほぼTMT(Technology,Media,Telecom、テクノロジー・メディア・通信)業界しか関心を持てないですが、セコイアは社内で消費チーム、工業チーム、医療・ヘルスケアチームを結成しました。
そして、Growth Capitalも立ち上げ、「グロースステージの企業」にも投資し始めます。ドルファンド以外には、人民元ファンドも立ち上げました。
セコイア・キャピタル(アメリカ)は1972年設立され、24年後の1996年にGrowth Capitalを立ち上げました。セコイアキャピタル・チャイナは設立されて僅か数年でGrowth Capitalを立ち上げました。これは中国のトレンドとスピードに合う決断です。
後は、グローバリゼーションです。今はみんなインドや東南アジアに注目してますが、我々は10年前からインドに投資、5、6年前から東南アジアに投資してます。これからも、インド市場と東南アジア市場にもっともっと注目します。
※注釈1:90年代に外資ファンドが中国進出。長い間、ベンチャーキャピタルはドルファンドしかありません。
※注釈2:インドや東南アジアに注目してる同業者は最後の「グローバリゼーション」にはびっくりしませんか?一つの例をあげます。今年から日本進出のインドユニコーン企業「OYO Rooms」、2015年に初めての融資(Aシリーズ)に出資したのはセコイアです。あれから、8回の融資を行いました(ソフトバンクはBシリーズから出資、セコイア(アメリカ)はDシリーズに出資)。

記者:「Xiaomi」に出資しなかったですね。こんなスターをミス (miss) した原因は何ですか?
シェン:確かに惜しいです。当時はスマートフォンメーカーのポテンシャルと爆発力に十分に意識出来てませんでした。その後、「Yunmi」や「Huami」など「Xiaomi」の関連企業を何社に出資しました。そして、スターをミス (miss) したことに反省するより、出資した企業にミスを犯したことに反省すべきです。社内にも3年前や4年前の判断にレビューし、犯したミスをまとめします。

記者:10兆円規模の投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」、人工知能関連の企業だけを対象としていく考えにどう思いますか?この規模で勝ちますか?そして、どんなご関係になりますか?
シェン:もし「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」の皆さんがこれから5兆円〜10兆円の評価額の企業が100社や200社を増加と判断するなら、大きな規模の資金でトップ企業を投資する戦略は正しいだと思います。大切なのは「実行」です。
ファンドは「リターン」で勝負し、AUM(Assets under management、運用資産残高)で勝つわけではありません。セコイアはどの規模の資金で投資するか、我々が見えた投資チャンスによります。
セコイアは「Work for」創業者、「Control」ではありません。
「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」と競争もあり、提携もあります。どっちかというと、提携の方が多いと思います。

記者:「Control」と言えば、ソフトバンクの孫正義氏はある時期に「滴滴(DiDi)」と「ウーバー(Uber)」が合併をさせるため色々動きましたね。これについて、有名な投資家・資産家のユーリ・ミルナー氏(DST Global)に批判されました。あなたはどう思いますか?
シェン:お二人の考え方は違います。ユーリ・ミルナー氏は「創業者に干渉しない」を主張し、取締役権と投票権を創業者者に譲渡する人で、孫正義氏と正反対です。誰が正しいとは言えません。セコイアはできれば、この二つのやり方の真ん中にします。創業者と経営陣に十分尊重し、経営に意見も出します。
※注釈:シェンは取材でそう言いましたですが、他のVCと比べれば、セコイアは凄くアグレッシブです。狙った企業の創業者を男子トイレの前で待ち伏せ、そして会議室に閉じ込み、半分誘惑半分脅してタームシートにサインさせるの噂もあります。みんな仲良しの日本同業者たちが考えられない厳しい競争状態です。

記者:投資歴14年間に、何か深い理解を出来たことがありますか。投資で、企業を変化させたことがありますか?
シェン:深い理解を出来たことは、まさに投資で企業を変化させることです。
もし2010年に「美団(Meituan)」に出資しなかったら、「美団(Meituan)」はここまで行けますか。Maybe,Maybe no。2015年に「美団(Meituan)」と「点評(Dianping)」が合併する件に賛成しなかったら、今も合併してないかもしれません…

記者:ライバル関係の企業を何社に投資しましたよね。お互いの関係をどうやってうまく行かせますか?
シェン:その一、同じ時期にライバル関係の企業を何社に投資してません。2010年に「美団(Meituan)」に出資した頃、「点評(Dianping)」とはライバル関係ではありませんでした。2013年に「餓了麼(ele.me)」 に出資した頃、「美団(Meituan)」とはライバル関係ではありませんでした。ニュースアプリ「バイトダンス(Toutiao)」 に出資した頃、「TikTok」 はまだ出来てなかった、セコイアは動画アプリ「快手(Kwai)」に出資しました。
その二、ポートフォリオの間、ライバル関係になったら、セコイア社内にはこの二つの会社が違う人に担当します。
その三、いつもこの企業の「利益最大化」を原則として決断します。

記者:「美団(Meituan)」と「餓了麼(ele.me)」がライバル関係になった頃、セコイアは両社に出資金を増加したのはなぜですか?
シェン:ポートフォリオ企業に出資金を増加することは「応援する」ことで、セコイアは必ずポートフォリオ企業を守るの証です。

記者:セコイアはある企業に出資するつもりですが、ポートフォリオ企業のCEOに強く反対されたら、どうしますか?
シェン:真剣に検討します。
記者:そうすると、感情を挟んでるじゃないですか?
シェン:感情も重要です。

記者:創業者から「いい評価」を貰えるかどうか、気になりますか?
シェン:創業者から「いい評価」を貰えるより、尊厳されたい、信頼されたいです。

記者:ファンドの経営者として、「LP」、「創業者」、「社員」、どれが一番重要ですか?
シェン:うまく行くなら、三者の利益は一致してます。
記者:アリババグループの馬雲氏(Jack Ma)は、「顧客は一位、社員は二位、株主は三位」とおっしゃいましたが…
シェン:誰がセコイアに「リターン」を得られるなら、誰が一位になります。
※注釈:基本の基本は「リターン」です。
残酷ですが、ポートフォリオ企業のCEOの意見に聞くかどうかもこの企業の「リターン」によります。

記者:ある投資者が「100万ドルのためなら、土下座でもする」と言いました。どう思いますか。
シェン:土下座はしません。
記者:軽蔑するね。
シェン:土下座しても、優秀な創業者から100万ドルの出資チャンスをもらえないです。
※注釈:これも中国でVCの間に厳しい競争の話です。本当に優秀な創業者なら、目の前に出資志望のVCはいくつがあります。ある投資者は100万ドルの出資チャンスをもらえるなら、何回も何回もお願いするべきの主張です。シェンはVCの間には実力で勝負し、優秀な創業者はどのVCを選ぶについて自分なりの考えがあり、お願いべきではありません、お願いしても無駄の主張です。

記者:セコイアが出資したTMD(バイトダンス(Toutiao)、美団点評(Meituan Dianping)、滴滴(Didi) )について、今後の業績伸び率について、どれが一番になるか予想してませんか?
シェン:5年後、10年後、20年後によって違います。
※注釈:シェンはこの質問にはっきり答えませんでしたが、「時点の要因」を考えなきゃならないの「思考法」を教えてくれました。

記者:テンセント(Tencent)V.S.バイトダンス(Toutiao)、アリババ(Alibaba)V.S.美団点評(Meituan Dianping)、結果はどうなると思いますか。
シェン:長期的に共存共栄。

記者:中国市場に激しい競争の中に、プレーヤーのベースライン(ボトムライン)は何ですか?
シェン:責任を持って、冷静な決断をする。

記者:ある投資者が「世界を変わるのは創業者、人に覚えられるのも創業者、投資者ではありません」と言いました。どう思いますか。
シェン:人に覚えられないのは成果が足りないからです。でも、「人に覚えられること」は目標にすべきではありません、「達成感」の源ではありません。このことについては、創業者にも、投資者にも通じます。

記者:「ビジネスルール」にどう理解してますか?
シェン:少数の企業が既存のルールを壊すことができます。たくさんの企業は既存のルールを活用することで成功に導きました。

記者:いいCEOの基準は何ですか?
シェン:戦略目線を持ち、執着、厳しい決断でもする、資本の活用法にも詳しい。

記者:「最高のCEO」は誰と思いますか?
シェン:功利的な考えになりますが、「一番成功するCEO」は「最高のCEO」です。

記者:「美団点評(Meituan Dianping)」の王興氏、「バイトダンス(Toutiao)」の張一嗚氏、「最高のCEO」と言えますか。
シェン:結果的言うと、2人とも「最高のCEO」です。
※注釈:凄く冷静な答えですね。こんな一言で「本質」を辿る答えは「最高の答え」と思います。

記者:人間性をどうやって把握するか?
シェン:この人が「貪欲」、「挫折」、「成功」に直面するときの「チョイス」を観察して把握する。

記者:あなたに怒らさることは何ですか?
シェン:自分の地盤で負けること。例えば、EC企業に投資は成功だった我々はあるEC企業をミス (miss) した。価値があるEC企業に全然気付きませんでしたや、EC業界の時代はすでに終わるとミス判断した、これは大きな間違いと思います。

記者:「運」に信じますか?
シェン:「運」は手に留まらないものです。でも、「読書、優秀な人と交流、思考」を通して、自分の判断を正しくなる。これは手に留まるものです。

記者:同業者に「アグレッシブ」と評価されますね。
シェン:You can be aggressive,you have to be long term aggressive。

記者:他人がどんなことを言い出すなら、失礼な人と思います?
シェン:If they are not talking about facts。
※注釈:「嘘つき」の意味があります。そして、「中国は格差社会で、目に見えることは真実の一部分しかない」と良く言われます。投資者も創業者も、ちゃんとリサーチしない、理解できた一部分のことを全てだと思い、この上で判断すると、シェンに失礼な人と思われます。

記者:How much success is enough?
シェン:こんなことに関心を持ってません。10年後や20年後、どれほどの企業がセコイアに出資をもらったことに誇りを持つことに関心を持ってます。

最後に

「The king of VCが語る、投資の価値観」の紹介はここまでにします。
この前も申し上げましたが、記事を書くのは、「自分の知識欲を満たすため」です。
自分がちゃんと理解してないことを他人に伝われないから、他人に伝わる前には勉強しなきゃならないです。「記事を書く」は「目的」ではなく、自分の背中を押す「手段」です。理解を深めたいなら、資料を沢山読んで、自分を納得し、また外国語で長文を書き出す、出来だ外国語版を読んで、矛盾してないを確認し、再び納得します。「一を闻いて十を知る」ということです。
今回もシェンの言葉を何回も読ませて頂き、勉強になりました。ありがとうございます。

因みに、筆者はセコイアキャピタル・チャイナが出資した662社のリサーチが報酬ベースで承ります。vivianxiahuan@gmail.com までにお問い合わせいただきたく存じます。


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