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社畜になった今、「N・H・Kにようこそ!」を観て感じること

ガルパン最終章第三話を観に行く前にシリーズ作品の復習をしようとdアニメを契約したのだが、無料体験期間が余ったため「N・H・Kにようこそ!」を観ることにした。

あらすじ

大学を中退して4年目の佐藤達広は、ひきこもりとなり脱法ドラッグを常用するなど自堕落な生活を送っていた。佐藤は、自分が大学を辞め、無職でひきこもりであることなど全てが、謎の巨大組織の陰謀であると妄想する。その組織の名はNHK(日本ひきこもり協会)。

そんな折、佐藤は宗教の勧誘に現れた中年婦人の連れの美少女と出会い、その後も漫画喫茶の面接の際に偶然再会するが佐藤は直ぐに逃げ出してしまう。 面接の履歴書から住所を突き止めた謎の美少女は佐藤の家に履歴書と共に公園まで来るように書いた手紙を添える。

中原岬と名乗る美少女は佐藤をひきこもりから脱却させるべく、「プロジェクト」の遂行を宣言。その「プロジェクト」の目的が不明のまま、岬による佐藤のカウンセリングが始まり、さらに程なくして偶然同じアパートに住んでいた後輩の山崎薫と共にゲーム作りに励む事になる。

NHKにようこそ! - Wikipediaから引用

あらすじからも漂う鬱作品感。
映像も暗い場面が多いし合う合わないは激しいだろうが、私は高校1年生の頃に観て大好きになった作品だ。
あらすじを読んで興味が湧いた方はこの続きは読まず、dアニメでもレンタルDVDでもいいから観ていただきたい。

登場人物

・佐藤達広。本作の主人公。大学入学を期に上京したが中退し、親からの仕送りで暮らすひきこもりのニート。原作小説では脱法ドラッグを常用している。
・中原岬。本作のヒロイン。実の父親と死別、母親は再婚相手からDVに合い目の前で飛び降り自殺。自身もDVに合い叔父に引き取られて暮らしている。
・山崎薫。高校時代の後輩。親に反抗して大学を辞めて上京、アニメ系専門学校に通う。いろいろアレだが一番マトモ。
・柏瞳。高校時代の先輩。公務員になり婚約者がいて順風満帆な人生を歩んでいるように思えるが、大量の抗鬱剤や睡眠薬を常用している。
・小林恵。高校時代のクラスメイト、学級委員長。借金を抱えながらひきこもりの兄を養っており、マルチ商法から抜け出せなくなっている。

感想(ここからネタバレ度高し)

さてこんなあらすじも登場人物も鬱要素だらけの作品なのだが、結末を言ってしまうと佐藤くんはひきこもりから脱却する。
家族からの仕送りを削られ、山崎は実家に戻り、ある出来事から岬ちゃんとも距離を置くことになってしまい、このままでは餓死すると考えた佐藤は交通誘導警備員のアルバイトを始める。
そしてなんだかんだ岬ちゃんとの関係も修復され、2人は前向きな共依存を始める。

初めて「N・H・Kにようこそ!」を観た頃の私は中学を卒業したものの、中学時代にあったイジメが原因で他人との適度な距離感の取り方がわからなくなり、病院には行っていなかったがもし医師の診断を受ければ「社会不安障害」という病名がつけられそうな状態だった。
恐怖で電車に乗られないので、家から歩いて通える高校に入学し、高校でも特に最初の1年は怯えて過ごしていた。

そんな私にとって佐藤くんは考え方を理解できる部分もあるが、自分を重ねるというよりは自分が将来そうなるかもしれないと感じる存在だった。
そして佐藤くんがひきこもる姿はリアルに感じるが、その後のひきこもりを脱出していく姿は現実味がなかった。

しかし今自分は28歳の社畜になった。
年齢的にも社会での立ち位置としても佐藤くんを追い越してしまっている。
心を病んで1年ほどニートも経験したが、結局社畜に戻った。
そんな今の自分の目線で観ると、「N・H・Kにようこそ!」は絶望的な空気を押しのけて「生きるため」に、少しだけ頑張ることを選ぶ希望の物語だと感じた。

最近の私はネット上の意識高い言説に流され、やりがいのない仕事にから逃げ出したくなることがあるが、そんなものは贅沢だ。
やりがいを求めることがむしろ生きることの邪魔になるなら、そんなものを求めるのはやめた方がいい。
衣食住を確保するために働く佐藤くんを見習うべきだ。

最終話で佐藤くんはそれまでとは違うアパートから出てくる。
佐藤くんが元々住んでいたアパートの部屋は岬ちゃんの部屋から丸見えの位置にあった。
自分よりダメ人間な佐藤くんに優しくすることで岬ちゃんは承認欲求を満たしていた。

主人公が引っ越したということは、佐藤くんと岬ちゃんは相互依存しつつも程よい距離感を持つことができるようになったのだろう。
ひきこもりだった佐藤くんは生きるために働くようになり、少しだけ先のことまで考えて生きられるようになった
それはゲーム作りで成功することや、RMTで一攫千金を狙うことや、マルチ商法で一発逆転することとは比べ物にならないくらい地味だが、ダメ人間な私達が本当に目指すべき道だ。

佐藤くんが自殺オフ会に参加したとき、山崎は佐藤くんに言う。
「ドラマチックな死は僕等には似合いません」
「ドラマチックな死は似合わない」ということは「ドラマチックな生き方なんてできない」ということも初めからわかっていたんだろうな。

格好悪く生きていこう。


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