中国で空母6~7隻保有論─インド洋にも配備?

 中国で「空母を6~7隻保有すべきだ」とする意見が出ている。現有空母は進水したばかりの「福建」を入れても3隻で、実現すれば倍増することになる。太平洋だけでなく、インド洋への配備も想定しているようだ。

■3大艦隊に2隻ずつ

 空母倍増論を唱えたのは上海交通大学の国家戦略研究センターで特約副研究員を務める軍事専門家の王宏亮氏。7月11日と14日に有力ニュースサイトの澎湃新聞を通じて、中国の空母戦略に関する論文を発表した。
 王氏は論文で次のように主張した。
 一、中国海軍が中長期的任務を基本的に果たすには6~7隻の空母が必要だ。
 一、1隻目で訓練・予備用の「遼寧」は改良して引き続き使うほか、北海艦隊に作戦用として1隻を配備する。東海艦隊と南海艦隊にもそれぞれ2隻を置く(2隻目の「山東」を含む)。
 一、中国にとって最も重要な貿易ルートを守るため、インド洋に将来、常備艦隊を派遣する可能性はあるのか。もしそうなれば、その艦隊にも空母が必要になるだろう。
 一、075型強襲揚陸艦(現有3隻)も多用途の空母に改造できる潜在力がある。
 王氏はインド洋艦隊構想を詳述しなかったが、習近平国家主席が唱えた経済圏「一帯一路」の「海上シルクロード」を軍事的に補強する狙いがあるとみられる。

■6隻目は早くて15年後

 王氏はこれまでの空母建造ペースから、6隻目の空母が進水するのは早くても2037年になると予想。旧ソ連時代に艦体が造られた「遼寧」がその頃まで現役でいられるかどうかは未知数だと指摘した。
 また、今後建造される空母について、(1)遠洋航海の必要を考えれば、原子力推進の方が優れている(2)「福建」でも約8万トンの排水量を10万トンまで大きくすれば、カタパルトなどを増やすことができる(3)大連(遼寧省)と上海に加えて、第3の空母建造基地が設けられる可能性は大きくない─との見方を示した。
 中国当局はこれからどのような空母を何隻造るのか全く明らかにしていないが、中国メディアによると、2018年に造船大手の中国船舶重工集団(現中国船舶集団)は、海軍が25年までに遠洋展開への戦略的転換を達成できるように同国初の原子力空母や新型原潜の開発を急ぐとの方針を公表している。
 ただ、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは6月23日、専門家の話を基に、原子炉の技術的問題のため4隻目の中国空母も原子力推進にはならない見通しだと報じた。米空母のような10万トン級の原子力空母を中国が建造するのはなかなか難しいようだ。(2022年7月21日)

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