Ai Nikkor 24mm F2.8Sを整備して,スナップ写真を撮ってみた
おつかれさまです.今回は,私の好きな画角24mmの単焦点レンズを分解・整備する話である.同時に,Ai-S NikkorをAi-P相当に改造して,ZマウントのNikon Zfcに純正マウントアダプターのFTZを介してこのレンズを装着し,Exifに撮影時の絞り値を記録できるようにする.私は,どうも写真を見返すときに,撮影時のシャッタースピード,絞り値,ISO感度が気になって仕方がないのだ.
タンポポチップを使ったAi-P相当への改造は,既にAi Micro-Nikkor 55mm F2.8Sで実績があり,たいへん満足している.今回のAi Nikkor 24mm F2.8Sも,金属加工無しで取り付けられるはずである.
Ai-S Nikkor はニコンのマニュアルフォーカスレンズとしては最後期のバージョンのため,中古価格もお高めだが,幸いにもオークションで送料込み約2千円で入手できた.タンポポチップがロシアから届く間を利用して,分解・整備にとりかかろう.
現状把握
入手したレンズの外装は,絞りリングのローレット加工の塗装が一部剥げていてちょっとくたびれているが,大きなキズや当たりはなく,実用上は問題ない.フォーカシングリングを回してみるとスカスカだったが,これはよくある症状なので,グリス交換すれば直るだろう.レンズ内部は,やはり中玉にカビが繁殖していて,これは分解して掃除しないといけない.
というわけで,レンズを一度完全に分解して,掃除したあと,組み立てることにした.この時代のレンズは何度か分解・組み立てしているので,なんとかなるだろう.いちおう,参考になるサイトを貼っておく.
分解・整備
マウント側からのアプローチ
オールドレンズの金属製マウントは,留めているネジを回すのに苦労することが多い.私はこれまでの経験で,ネジを舐めてしまうことが何度かあったので慎重に行っている.まずはネジの周りに無水アルコールを十分浸透させ,1時間くらいは放置する.次にドライバーの先端に「ネジ山まわし」を付けて,レンズを机に置いてドライバーを鉛直に当てて回すようにしている.使うドライバーはいろいろ試してみたが,ちょっとお高いがPBのドライバーを愛用している.
マウントが外れれば,絞り環を外しておく.
フロント側からのアプローチ
フロント側は,まずゴム製のリングを外す.爪楊枝を滑らせていけば,難なく外れるはずだが,私のレンズの場合,強力な接着剤が使われていて苦労した.無水アルコールを使って,ゴムを引き裂かないよう慎重に外した.
先端のつばを力が入るようゴム手袋をして外し,イモネジで留まっているリングを外すと,レンズユニット全体が外れる.
ヘリコイドの分解
今回は,フォーカシングリングがスカスカなので,ヘリコイドを分解して,グリスを交換する.言うまでもないが,ヘリコイドを外す際に外れる位置をマークすることを忘れずに行う.2つのヘリコイドを外したら,ベンジンで古いグリースを拭きとり,新しいグリースを薄く塗った.
実は,写真の下側のヘリコイドは,かみ合うポイントが一つしかないようなので,間違えることはないのだが,上側のヘリコイドは,かみ合うポイントがいくつもあり,正確にマークしておかないと組み立ての際苦労する.
レンズユニットの分解・清掃
まず最前面のレンズを外した.あとはカニ目レンチを使って次々と中玉,後ろ玉を分解していく.どうやらこちらのレンズは,一度分解された形跡があり,ケガキ線が残っていた.
このレンズは,中玉・後ろ玉のレンズの数が多く,分解・組み立てはかなりの工数である.私は組み立ての際にレンズの前後を間違えてしまい,気が付くまで四苦八苦してしまった.レンズの前後が分からなくなった場合は,下のレンズ構成図をよく見て確認しよう.
フォーカスの調整
概ね組み立てたら,フォーカスの調整を行う.下の写真に見える3つのネジを緩めてフォーカスの調整を行う.
私の場合は,ミラーレスのZfcにFTZを使ってレンズを装着し,フォーカスピーキングと画像拡大を使って調整した.遠くの山など遠景に向けた際に,フォーカシングリングを回し切りピントが合えばOKである.
回し切ってもピントが合う場所がない場合は,回し切った状態で先ほどのネジ3本をゆるめ,フォーカシングリングのみ少し戻した状態でネジを締めて固定する.再度リングを回し切った状態で無限遠でピントがあうか確認する.
逆にフォーカシングリングを回し切る手前で無限遠のピントが合う,いわゆるオーバーインフの場合には,一度最短撮影距離方向にフォーカシングリングを回し切り,ネジを緩めてリングを少しもどしてネジを締める.
何度かトライアンドエラーを繰り返せば,適正な位置に合わせられるはずである.
タンポポチップの取り付け
タンポポチップは,今回もeBayから発注した.年末年始を挟んだためか,3週間かかったが無事に到着した.
このレンズは,スペーサーなしでタンポポチップを取り付けられる.0.5mm厚の極薄強力両面テープを使って取り付けた.位置決めはかなりシビアで,付属の治具を使って慎重に行った.
タンポポチップの設定は,上の記事に詳しく書いてあるので参照されたい.落ち着いてやれば難しくはない.
まとめ
今回も,レンズユニット・ヘリコイドを全て分解・組み立てをして,手間はかかったが納得のいく整備ができて良かった.オーバーホールを終えて改めて眺めると,レンズの前玉がキラキラして見てるのが楽しいレンズである.
タンポポチップのおかげで,レンズ交換の度に「レンズ情報手動設定」で焦点距離と開放絞り値を選択する必要もないし,カメラは自動的にマニュアルフォーカスモードに切り替わり,さらにExifに撮影時の絞り値が記録され,言うことなしである.
ちょっとだけ作例
APS-CセンサのNikon Zfcでは,35mm換算で焦点距離36mmの画角になる.撮影は仕事あがりになるので,冬は夜景が多くなってしまった.
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