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絞りリングの外径が小さい非AiニッコールのためのAi化フック部品の製作

おつかれさまです.
非AiのニッコールレンズをAi化するには,絞りリングを一部削ってカメラ側の露出計連動レバーを作動させる方法がよく紹介されている.しかし一部のレンズでは,絞りリングの外径が小さく,そもそもカメラ側のレバーと干渉しないものが存在する.私がNikon D600との組み合わせで確認しているのは.Nikkor-H Auto 28mm F3.5,Nikkor-S Auto 35mm F2.8,New Nikkor 50mm F1.4(後期型,製造番号による)の3機種だが,Nikkor-UD Auto 20mm F3.5もそうらしいし,他にもあるかもしれない.

そのような場合,フックとなる部品を製作し,カニ爪用のネジ穴を利用して固定する方法を紹介した.この部品はアルミ板を手作業で切削して作っていたのだが,いかにも手作り感があって見栄えが悪い.そこで,近頃マイブームになっている,3Dプリントサービスを利用して製作したのでご紹介する.ちょっとニッチなはなしなので,ご興味のある方だけ読んでいただければと思う.

3D図面の作製

3DCADはDesignSpark Mechanicalを利用した.このCADは無償でダウンロードでき,商用にも使えるのがありがたい.寸法は下の2D図面で示す厚さ1.5mmの薄板を,直径61mmの円筒に巻き付けた形状である.これを3DCADで書く.取り付け用のねじ穴は,部品のエッジに近いので,とりあえず1mm角の小さい穴を作っておいて,あとからドリルでφ1.4mmに拡張することにした.

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上から解放絞りF1.4用,F2.8用,F3.5用です.

図面ができたらDMM.makeにアップロードし,材質を指定して発注する.材質はアルミニウムのような金属が良いのだが,安価なPA12GB(MJF)というプラスチックにした.まあ,これでも寸法精度は十分なようである.

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上からF1.4用,F2.8用,F3.5用です.

発注して10日間くらいで,モノになって宅配便で届いた.レンズに取り付けるための1mm角の穴を丸穴にするのだが,このとき使うドリル刃は少し小さいφ1.2mmくらいが良い.取り付けるビスは,カニ爪を固定しているビスをそのまま使っても良いが,シルバーのビスが目立ってしまうので,黒く塗装されたM1.4x2.5mmのビスを購入して利用した.本当は皿ネジでないほうが良いのだが,近所のホームセンターでは入手できなかった.

カニ爪を外して,代わりに製作したパーツをレンズにねじ止めした.この時皿ネジを強く締め付け過ぎるとパーツが割れてしまうので,そこそこのトルクで締めてほしい.

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納品された状態です.

私の場合,絞りリングを回して試してみると,カメラ側のレバーが引っ掛かってしまった.これは,パーツ表面の微妙な凸凹を紙やすりで修正して解決した.

機能確認できたら一度取り外し,黒のラッカースプレーとクリアのラッカースプレーで塗装して再度取り付けた.

まとめ

近頃は,ミラーレスカメラにニッコールレンズを装着して楽しんでいる.絞り優先自動露出で撮影できるのは良いのだが,EXIFに撮影の際の絞り値が記録されないのが残念である.それに対して,ニコン一眼レフの中上級機(D7000シリーズとD3桁代)では,非CPUレンズの登録機能があり,撮影前に設定しておけば絞り値が記録されるのが,とっても嬉しい.

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カニ爪の代わりに製作した部品が,さりげなくついています.

もし上記の一眼レフカメラをお持ちなら,ご紹介したパーツを使うと,復元可能な状態でAi化改造ができるので,是非オールドニッコールを試してもらいたい.今回の改造に使用したレンズ3機種は,中古価格もお手頃で,どれもすばらしいレンズである.

3D図面の作成は,せっかくの機会なので各自で行うことをお勧めするが,そういうのが苦手な方々には,こちらから直接パーツを注文できるようにしておいたので,良ければご利用されたい.

<補遺>New Nikkor 50mm F1.4(後期型)について

New Nikkor 50mm F1.4(後期型)については,レンズの絞りリングを一部削ってAi化改造している記事を見かける.しかし私が入手した製造番号が38063XXのレンズでは,私のD600に改造なしで装着できた.よって今回製作したフック部品を取り付けてAi化したのだが,この違いはなんなのだろうか? そこで,所有している非Aiレンズの絞りリングのスカート部の外径を,キャリパーを使って調べてみた.

●Nikkor-H Auto 28mm F3.5              φ60.2mm→装着可
●Nikkor-S Auto 35mm F2.8               φ60.2mm→装着可
●New Nikkor 50mm F1.4(後期型)φ61.0mm→装着可
●New Nikkor 50mm F2.0          φ61.4mm→装着不可
●New Nikkor 28mm F3.5                  φ61.5mm→装着不可
●Nikkor-P Auto 105mm F2.5            φ62.4mm→装着不可
●Nikkor-O Auto 135mm F2.8           φ63.2mm→装着不可

というわけで,私のD600ではスカート部の外径が61.0mm以下であれば装着可能で,61.4mm以上では装着不可だった.実際にNew Nikkor 50mm F1.4をD600に装着すると本当にギリギリで,カメラ側の露出計連動レバーとのクリアランスはほとんどないようだ.同じニコンのカメラでも,機種によって露出計連動レバーの位置が微妙に違うのかもしれない.

もうひとつ考えられるのは,同じNew Nikkor 50mm F1.4(後期型)でもバージョンがあって,絞りリングの部品が微妙に異なる可能性である.私は,こちらではないかと考えている.というのは,下の記事の写真を良く見ると,絞りリングに微妙に段差があって,肉厚の部品が使われているように見えるからである.

いつも読ませていただいてます.たいへん丁寧な記事をありがとうございます!

というわけで,New Nikkor 50mm F1.4については,カメラやレンズの個体によっては,レンズの絞りリングを削らないと装着できないかもしれない,というのが結論である.このあたりの情報があれば,コメントしていただけるとありがたい.

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