見出し画像

【1972年レコード】40)YES : 危機(Close to The Edge)


■データ

・リリース : 1972/09/08
・レーベル : アトランティック・レコード
・プロデュース : イエス
          エディ・オフォード
・チャート : US : 3位、UK : 4位
・スタジオ : アドヴィジョン・スタジオ
・所有ver : P-10116A(JAPAN 1976 WANER-PIONEEA)

■トラック・リスト

[SIDE-1]
1. クローズ・ザ・エッジ(危機)
 1-1. ザ・ソリッド・タイム・オブ・チェンジ(着実な変革)
 1-2. トータル・マス・リテイン(全体保持)
 1-3. アイ・ゲット・アップ・アイ・ゲット・ダウン(盛衰)
 1-4. シーズンズ・オブ・マン(人の四季)

[SIDE-2]
2. アンド・ユー・アンド・アイ
 2-1. コード・オブ・ライフ(人生の絆)
 2-2. エクリプス(失墜)
 2-3. ザ・プリーチャー・ザ・ティーチャー(牧師と教師)
 2-4. ザ・アポカリプス(黙示)
3. シベリアン・カトル

■メンバー

・ジョン・アンダーソン(ボーカル)
・スティーヴ・ハウ(ギター/バッキング・ボーカル)
・クリス・スクワイア (ベース、バッキング・ボーカル)
・リック・ウェイクマン(キーボード/メロトロン)
・ビル・ブルーフォード(ドラム/パーカッション)

■LINK

Discogs
Wikipedia

■メモ

  • YESの5枚目にして商業的に最大の成功を収めたアルバム。

  • 前作「フラジャイル」が成功からライブツアーでミックスを務めたエディ・オフォードをプロデューサーに迎えて制作。

  • 非常に多忙を極めた期間に作成した作品であり、全体の構想をアンダーソンとハウしか理解出来ていない上に、良い意味でも悪い意味でも凝りに凝った事で制作は多大なストレスを抱えながらのものとなる。そこで付いたアルバムタイトルがまさに”崖っぷち”。

  • セッションが明け方に終わった後、アンダーソンは疲れ果てながらもスタジオから歩いて帰る。彼は帰宅するとすぐに泣き崩れた。なぜなら「これで自分を正式にミュージシャンと呼べる」と決心し、それまで空白にしていたパスポートの職業欄に「ミュージシャン」と書いた。

  • プロデューサーのエディ・オフォードは、バンドのライブ演奏に感銘を受けていて、レコーディングでもライブに近い音を引き出す為、スタジオにライブで使うものに近い舞台を設置した。

  • 本作のジャケット表紙から「yes」の特徴的なバブルロゴが使われた。

  • クリス・スクワイアのグングンとうねるベースが心地良い。1曲目の「クローズ・ザ・エッジ」は18分越えの大作だが、全く聴き飽きず一気に聴き終える。

  • 2曲目(10:09)のフォーク調、3曲目(08:56)のファンキーなロックとどの曲もプログレならではの長さだが、無駄に長いコンセプト曲というよりも、ライブ演奏を聴いているような充実した内容で全く気にならない。

  • 1972年はプログレの最盛期。60年代後半に勃興したプログレはサイケとの区別が曖昧な時期を過ごしたが、ウッドストック後にヒッピー文化が歪んだ方向へ流れた事でサイケが見る見る衰退し、プログレが市民権を得て一本立ちした頃。

  • ビートルズが解散、ストーンズが米国ルーツ音楽探訪の旅に出て行く事で、60年代半ばから起こった一つの音楽シーンが絶対的な下支えを見失う中でYES、GENESIS、KING CRIMSONらプログレ勢、デヴィッド・ボウイ、T.REXらグラムロック勢と新しい音楽が求められ、認められた時期と思う。

  • 1972年に売れないバンドが、長髪でちょっと化粧して”グラム・ロック”と名乗る事で生き延び(スレイドとは言っていない)、自身を変えられないバンドは消えて行く。その一方でプログレの伸びやかで自由な発想からなる可能性はアンチも含め、80年代に繋がるムーブメントとして重要な役割を果たしていると思う。

  • これだけ好きに作品を作れた時点で、旧来のプロデュース、商業主義メインの運営側中心的(シングルが売れたらアルバムが作れる的な)音楽業界からアーティスト自身に作品制作の権限が委譲した一種の大変革期だと思うし、それまで英国/米国と別れていた音楽が一つになる事でよりマーケットが拡がり、ユーザーのニーズも多様化し始めた事の現れなのだとも思う。

  • 正直、10代後半はパンク系を主に聴いていて「4分越える曲なんて聴いてられない」「スタジアム・ロック?はぁ?」的な思考だった為プログレというだけで拒否反応があって、この歳までちゃんと聴いた事がなかった。という事でプログレ的な思い出はほぼ無く、あっても当然ながら80年代後半のフィル・コリンズ、ピーター・ガブリエルといったジェネシス勢程度。

  • ちなみにピーター・ガブリエルの「ビッグ・タイム」時代は好き。なんか怪しげな、いかがわしさが結構カッケーと思っていた。フィル・コリンズはヴィジュアルがちょっと‥で。まぁ中学生の頃なんで。

  • 本作でプログレを大いに見直すのだけど、プログレ自体を聴けるようになったのは、ここまでマイルスの「オン・ザ・コーナー」コリアの「リターン・トゥ・フォー・エヴァー」コールマンの「スカイズ・オブ・アメリカ」というフリー・ジャズ3作を聴いたからかも知れない。

  • まさに楽曲、演奏、録音と全て完璧な作品で、1972年を代表する傑作アルバムの1つと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?