テーマ決めの点数表

特集テーマ「デンマーク」が決まるまで 〜WYPのモノゴトの決め方〜(※全文無料※)

こんにちは、WYP編集部の近藤です。

今回は「WYPのモノゴトの決め方」について、Vol.1のテーマ決めの議論を例に書いてみます。

WYP vol.1の特集テーマは「デンマーク」だったわけですが、このテーマはどのような過程を経て決まったのでしょうか。

固くてつまらなそうなテーマかもしれませんが、私たちが7年間なんとかWYPを続けている秘訣はここにあるんじゃないかなと勝手に思っています。


まずは“決める軸”を決める

特集テーマに限らず、WYPで何か決めないといけないモノゴトがあるとき、最初によくやるのは「決める軸を決める」ことです。「議論をする前に、そもそも何を良しとするかを決めましょう」ということです。

Vol.1で特集する国を選ぶときは、これら5つを“決める軸”として決めました。

1.読者に“働きながら考える”きっかけを与えるインパクトがあるか
2.読者の興味(何も知らない読者が特集国の名前と働き方にどれくらい惹かれるか)
3.書店員の興味(サーッと読んだ書店員が、こりゃあ読者に勧めたい!と思うような流行の先をいっているか)
4.WYPがやる意味(他のマスメディアにできない特集か、WYPがやることでより面白くなるか)
5.実現可能性(実際に狙ったとおりの企画にできそうか、物理的な問題はないか)

4人の編集メンバーがそれぞれオーストリア、デンマーク、ドイツ、ニュージーランドという4つの案を出していましたが、これらの軸に沿って1〜5の点数で評価していきます。

※このとき、それぞれの軸に比重をかけるときもあります。例えば軸1と軸2では、軸1のほうが2倍くらい大切だ!となれば、軸1についた点数を2倍するなど。

点数をつけると、順位がはっきり出てきます。そこから機械的に1位のものを選ぶかというとそうではありません。

このときは、いろいろな議論を重ねて上位2つを選びました。

残った案は「デンマーク」と「オーストリア」。それぞれの特集の構成・台割(どのページに何を書くか、雑誌全体の構成をまとめた表)を具体的につくってから決戦投票をしました。

↓デンマークの台割案↓

↓オーストリアの構成案↓

当時の議事録を見返してみると、2014年5月11日に特集テーマの議論を始めて、最終的には6月29日に決まっていたようです。約1ヶ月半かかっています。

ちなみに、WYPには編集長という役職を置いていて、彼が持っている唯一の権限は拒否権です。これを絶対にしたい!と無理やり通すことはできないけれど、これは絶対にしたくない!と拒否することはできるようになっています。

これは、一人が何かを決めるのはよくないけれど、全体の統一性と品質を保つために一人の責任者が最低限のラインを守るようにするのはよいことだ、という理由からです。


とにかく時間がかかります。でも……

さて、WYPでのモノゴトの決め方についてお話してきましたが、このデメリットはとにかく時間がかかることです。とっても時間がかかります、ほんとうに。

WYPでは毎週日曜日に打ち合わせをしていて、重い話題だと数ヶ月かかることもあります。3ヶ月くらい議論した末に「よし、やろう!」と決まったことも、やってみたらあっさり失敗に終わったこともありました。

「仕事ではなくプライベートでやっているからこそ意思決定は迅速にスマートに効率的に」といきたいところですが、実際には逆でとっても時間をかけていろいろやっています。

でも冒頭にお伝えしたとおり、これが7年間続けてこられたし、これからも続けたいと思えている秘訣だと思っています。


理由はシンプル。この民主的な進め方のおかげで、一つ一つの仕事がそれぞれにとって自分事になっているからです。

どんなに小さな事柄もみんなに共有して、みんなが合意するまで話し合う。誰が言ったかではなく何を言ったかを大切にして、その内容と理由にまじめにとことん向き合って、みんなでOKを出せるまで時間をかける。

チームでやっているので、自分の思うようにいかないこともたくさんあります。それでも、ちゃんとした理由を持って意見を出せば、結果に反映されなかったとしても考慮はされます。

時間はかかるし無駄なこともたまにしていますが、こういった小さな積み重ねが「自分はWYPの意思決定にちゃんと関わっている。自分はWYPの一員だぞ」という自覚とモチベーションにつながっているんじゃないかなあと思います。

会社で働いているときは、仕事だから!という理由で人を動かしたり、動かされたりしますが、WYPの活動ではそうはいきません。「自分たちがやりたいから」以外にやる理由がないので、どうやったらその気持ちを維持できる環境をつくれるかは大切なのかなと思います。

以上、「WYPでのモノゴトの決め方」でした。何かのご参考になればうれしいです。

それでは!

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