介護職でベテランの先輩から「アクティビティなんてしなくていい」と言われて思ったこと。

もともと高齢者と関わることなんてまったくなくて、実家の隣に住むおばあちゃんと会う事すらも避けていた自分が、今介護職をしている。

社会人として立派に生きてきたとはとても言えないような経歴のまま介護職に転職し、介護の仕事としては七年経とうとしている。

介護職としてもぱっとしないまま今に至り、そして今、今更、介護の勉強をしている。

ネットのニュースを見たり、介護系のツイッターをフォローしたり、コメントしたり、介護系のブログを見てみたり、お勧めの本と書かれてあるのを買ってみたり。

そんな中から、自分の中にアンテナが立っていった。

ある人は言う。最も優秀な介護士は、他人の気持ちになれる奴だと。

ある本は言う。「大事なのは、刺激を与えること」

ある本は言った。「お風呂にいくら言っても入らない。どうしたらいいんですか? って聞かれたから、一緒に入ればいいじゃんって言ったんだよね。一緒に入ろうって言っても入らなかったら、「冷たい奴だな」って言えばいいって」

介護職として働いてきて、生活はできていたけれど、自分のしてきたことは大きく間違えているんじゃないかって、思った。
何も分かっちゃいなかったんじゃないかって。

自分は利用者さんに対して、何かGiveをしてきただろうか。
いや、昔から変わらず避けてきたんじゃないかって。

先日ツイッターで、お出かけしたいと事あるごとにいう利用者さんに対して
「ごめんね、時間がなくていけないんだ」といつも答えていたことを呟いた。
そして最後に、お前がただ何もしようとしなかっただけでは? と結んだ。
利用者さんから要望を受けたそのタイミングでは応えることができなくても、
時間を空けて一週間後とかでセッティングすれば時間なんてつくれるはずなのに、残業はしたくないとか、予定外のことはしたくないとかいった理由でやれるわけがないと思っていた。
業務時間内でアクティビティというタスクがなければやれないと思い込んで、利用者さんの要望を無碍にしていた。

だから今日、午前中に時間が空いていたから、
「ちょっと散歩しませんか? いい天気ですから」
そう誘ってみた。
利用者さんはもちろん喜んで「いくわ」と答えてくれたし、
出かける前に生活相談員に「ちょっと散歩してきます。20分くらいで戻ってきますので」といって、利用者さんを車椅子に乗せて外に出た。

施設の中での仕事は慣れているけど、外に出ると気分が一新する。
爽やかな風と暖かい日差し。20分の時間の中で、いつもの一周を行こうか。
利用者さんが花壇の花を綺麗ねという。自分も同意する。
買い物は時間的にいけないから散歩とお断りしてきたので、車道の脇を通って施設の方を目指そうかと思っていたら、前方に川が見えた。
そういえば長い川があったな、と思ったら、数秒でそこに行こうと決めた。
いつもとルートを変えて、川の傍のジョギングコースに到達すると、他にも散歩している人、ゴミ拾いをしている人たち、そして川沿いに小鳥が餌を求めててこてこと歩いていた。
早速利用者さんに「鳥がいますよ」といって指し示すと、
首が上を向けない円背気味の利用者さんは自分が何度も指し示した方向にいる小鳥を見つけて、「かわいい!」と言ってくれた。
少し小鳥を眺めていたら飛び立ってしまったので他に動物がいないか探していたら、ジョギングコースで小型犬を散歩している方がいたので、遠慮せずに近づきつつ、犬の無邪気なお散歩を眺めた。
利用者さんは猫好きだけど、犬の可愛らしさにも喜んでくれて、
二人して「可愛いですね」「可愛い」と言っていたら、散歩していた方が小さく会釈してくれたので、
「何歳ですか?」と聞いてみた。すると10歳ですと返答されたので、びっくりした。
「10歳って、老犬ですよね? とてもそうは見えませんね!」
犬好きを自負してはいるけど、普段は犬の散歩している方に声を掛けるなんてまずしないのに、今日はなんだか怖いもの知らずのように声をかけていた。
散歩されている方もつかの間の会話を楽しんでくれたように思う。
時間も差し迫ってきたので川沿いのジョギングコースから離れて施設に戻ってから、カンファレンスは中止だと知らされた。

あれ? 10時からカンファレンス? あれ? 自分普通に利用者さん連れて散歩してたけど、本当はカンファレンスだから散歩なんてしてちゃいけなかった? とようやく現状を理解した。
自分以外の職員も少なかったうえ、施設長も面接が入っていたためバタバタしていたため、中止になったという。結果的に中止だったため問題はなかったが、普通にカンファを忘れていた自分って一体……。

利用者さんを散歩につれていくんだ、と思った瞬間からカンファのことが頭からすっぽりと消えてしまっていた。これについては反省しなくてはいけない。


ただその後、夕方に夜勤者さんが来て、失敗話として「カンファあるの忘れてて利用者さん散歩に連れてってしまいました」と言ったら、「そんなことしなくていいよ」と切り捨てられたのが、今でも胸に残っている。

その職員さんはもしかしたら、

いつもであれば早番の休憩時間でもある午前の時間帯に、利用者さんを連れ出すというのが習慣化したら休憩時間がなくなってしまうから、そんなことはしなくていい。

そう言いたかったのかもしれない。たしかに最近は職員が辞めていっているので、職員の休憩時間がないかのように扱われるのは心外だとは思う。だけど最近利用者さんのアクティビティがまったく取れていなかったのは事実で、「今行きたい」と思った気持ちと、利用者さんがずっとお出かけしたいと言っていたこととかを全部ないがしろにされた気がして、その場では「ああ、そうですか」と答えたけれど、その職員さんだったら「いいねえ!」とか「馬鹿だねぇ」とかいった返答がされるのかと思っていただけに、そんな返答に少なからず驚いた。

利用者さんに関わろうとすること。向き合おうとすること。
利用者さんの立場で考えること。

自分に足りないものなんていっぱいある。どうでもいいなんて投げやりに思ってきたけど、もう少し向き合おう。
2月には転職するから、今の利用者さんとは会えなくなる。
今しかできないことをしよう。

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