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ペイフォワード Pay it Forward

映画『ペイ・フォワード 可能性の王国』(2000)をみた。内容としては、社会科の課題として、「世界を変えるために自分が何をできるアイデアを出し、それを実行に移してみる」ことを与えられた少年が、三人の人物を助け、そして三人の人物から恩返し(ペイバック pay it back)をしてもらうのではなく、恩(借り)を次の三人に恩送り(ペイフォワード pay it forward)してもらうことを意図するというもの。

作中では少年がペイフォワードを意図して三人を助けるものの、結局三人とも次の三人にペイフォワードしたとは少年は認識できず、自分のやったことは結果を伴わない失敗だったと結論づけて終わる。しかし一方、実際にはアリゾナ州からロサンゼルスまで州をまたいで人を助け与える行為が連鎖していて、その現象の根本原因をたどる記者が少年にアプローチしていくという内容となっている。

ペイフォワードという習慣や考え方は素晴らしいものだと思っているのだが、この映画ではさすがに演出が劇的過ぎてかえって胡散臭いほどであるというのが感想である。もちろん、勇気を出して自己犠牲を支払ったり、まったく見知らぬ人に話しかけて何かを与えるのは素晴らしいことではあるのだが、反面嘘くさかったり危険であったりもする。もっと地味な親切がペイフォワードの精神の元に広がっていくほうがむしろ私自身としては見てみたいところである。

人間は「善行」に味をしめるところのある動物である。というのも、やはり他者に自分が貢献できるという能力を持っていること、自分は有能で有用な存在であることを確認したいからである。そこに対してペイフォワードによって刺激を与え、心の余裕を与え、さらに他の人をよくよく観察し、何が相手にとって親切なのか、相手が何を求めているのかを察知して、相手に与えて挙げるチャンスを提供することができれば、最初にペイフォワードする側としては非常にうれしいことである。

とはいえ、普通はペイフォワードや恩送りという言葉すら知らない人の方が多いであろうから、何か親切を施したり物資やサービスを提供すると共にそういう意図をプリントしたカードを渡すなどして理解してもらい、単に恩返しをしてループを閉じるのではなくて、外部に対して親切を拡大していくような行動をうながすようなうまい仕掛けを考えないと広がるものものなかなか広がらないであろう。このような映画がせっかく公開されているのだから、この映画を起点にして良いパンフレットや画像をつくって自分が誰かに親切にするときに名刺代わりに配布するのもいいかもしれない。

(1,080字、2024.02.05)

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