給水器 water server
狭い部屋に一人で住んでいるのに給水器を置いている。定期的に届く大型のペットボトルを頭に載せたアレだ。利点は常に冷水と温水の両方が飲めることで、計算上は小さなペットボトルを毎回買って棄てるよりはお得になる。
とはいっても、私はコーヒーを常飲するようなタイプでも無いので基本冷水しか使わない。以前、ミネラルウォーターの比較をやったときに、水の味というのは温度によっても印象が変わるので、ぬるい水道水を飲むよりはかなりマシである。
昨日は給水器に乗っかっているほとんど直方体の給水ペットボトルが空っぽになったので入れ替えた。そして今朝になって水を飲もうとすると、何杯か飲んだ後に出てこない。もちろん取り替えたばかりだからまだ水は残っているはずだ。
よくみると、ヒビが入っていた。2年以上は同じマシンを使っていたわけだからこういうこともあるのだろうか? 給水ペットボトルを取り外し、外せそうなカバーを取り外すと、中はずいぶん黒ずんでいる。それはまあ見なかったことにしてもいい。前からそうだったのだろう。
どうも水が出てこなかった原因は別なようで、冷水を出す側のプラスチックが割れてしまっている。格別給水器を動かしたり叩いたりといったことはしていないから、何度もそれなりに重たい給水ペットボトルを載せていた衝撃が蓄積して割れてしまったのだろうか? とにもかくにもプラスチック板は完全に分離してしまっていて、これをどうにかしてくっつけるしかない。
自宅に瞬間接着剤は無い。あるとしてもせいぜい木工ボンドぐらいだ。近所のコンビニに走れば瞬間接着剤が手に入るかもしれない。ただ、まず瞬間接着剤があるかどうかわからないし、それで補強できたとして、まともに冷水が飲める保証は無い。接着剤入りの水を飲むはめになるかもしれない。それに何よりも今は眠い。今日は休みでもリモート勤務というわけでもないから、仕事の後に対応を考えるか……。狭い部屋でマシンが壊れると、壊れた破片の置き場所にもなおさら困ってしまう。面倒だなあ。
ところで、こういう場合は給水器の業者に連絡して何とかしてもらうのが確実かつ安全なのだろうが、そのときは眠かったし、早朝未明のことであったので思いつかなかった。仮に業者に連絡するとしても昼間になっていただろう。
こうしたトラブルのことを考えたが、まだ早朝だったので、目覚めた後の対応を想像してやや悶々としながらも、もう一度眠りにつくことにした。
そしてまた目覚めると、給水器はヒビ一つなく、何事もなかった顔をしていた。すべて夢だったのだろう。私は水を飲んだ。
(1,068字、2023.12.08。日米戦争開戦記念日に)