見出し画像

おかねは人を変えるー担当していた会社が潰れた時の話 その1

こんばんわ。こんにちわ。おはようございます。読んで頂き有難うございます。

今回はタイトルの通り、銀行員時代に担当していた会社がつぶれた時のことを綴ります。(かなり前の話ですが、ノンフィクションなので色々細かいところは変えさせて頂きます。)

「A工業の手形不渡りになったぞ。」

外回りから帰ってきた私へのその一言で全てが始まりました。A工業は前々からかなり悪い兆候が見られました。まず会社の成績表である決算書が出てこないところから始まり、会社に行くと従業員の退職届が社長のデスクに積み重なっていたことも。ただ、私が勤務していた銀行はA工業と取引があまりなく、また当時社会人2年目だった私には、もはや何もできない状態にまで陥っていました。

それでも何とかしなきゃと思いつつ、日々の他の仕事に忙殺されていた時、上記の「手形不渡り」という状態が起きました。

手形不渡りについての詳細説明は省きますが、約束していた期日に支払ができず、資金不足に陥ったことを明確に示す事案です。今日ではなく翌日に支払えばいいという問題ではなく、期日に支払うということが絶対的に重要で、この情報は全ての金融機関に即日共有されます。そうすると、基本的に(融資をしている金融機関は特に、)全ての金融機関で口座が凍結され、入出金ができなくなるため、事実上の倒産となります。1回目の手形不渡りは「事実上の倒産」と良く呼ばれます。

急いで会社に電話して社長に確認すると、手形不渡りを確認した事実と、他の金融機関同様に口座を凍結したことを伝達しました。そして、「今後はどうされる予定ですか?」と聞くと、

「会社と私個人も破産手続きをします。」

とのことでした。その後上司と一緒にオフィスを訪れ、疲れ果てた社長にもう一度同じ内容を伝達・確認しました。オフィスには他の取引銀行と、取引関係のある会社の人々が来ており、騒然とした状態でした。

少しテクニカルな話になりますが、「破産」では基本的に会社から裁判所に破産申立をし、裁判所で受理されると弁護士が「破産管財人」として会社の持っている資産と債務を全て管理・処分することになるので、弁護士が銀行との窓口となり、社長個人とやり取りすることは基本的になくなります。家まで押しかけて取立なんてことは、禁止ですし少なくとも真っ当な金融機関はしません。また、倒産したのは会社なのに何故社長個人も破産するかというと、中小企業は基本的に会社と社長個人は不可分なものとして銀行(を含めた金融機関)は見ている為、「連帯保証」という形で社長個人が会社の借金の保証人になっているケースがほとんどです。つまり、保証人である社長にも借金を返済する義務があり、とても全ての銀行からの借入を返済できるだけのおかねがなかったため、社長個人も破産せざるを得ない状況となったのです。

数日後、実際にA工業とその「社長」は破産申立をし、その破産手続が裁判所から認められた通知を受領しました。私はいたたまれない気持ちになりつつも、粛々と各種手続きをするつもりでいました。

しかし、この後「粛々と手続きをする」ということはできませんでした。何故ならこの会社には、もう一人連帯保証人である「常務」がいたからです。

この後はまた次回書かせて頂きます。

読んで頂き有難うございました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?