見出し画像

【展覧会レポ】サーリネンとフィンランドの美しい建築展 @ パナソニック汐留美術館

「仕事は精神の創造的成長の鍵である」
 エリエル・サーリネン


みなさん、こんにちは。

パナソニック汐留美術館で現在開催中の本特別展。
自然に満ちた美しい北欧のフィンランドを舞台に、エリエル・サーリネンという建築家の軌跡を追います。

本特別展は撮影が基本的にNGでしたので、テキスト多めになりますことご容赦ください。


森と湖の王国、フィンランド。

この地に、エリエル・サーリネンという建築家、芸術家、都市計画家がいた。

本特別展は、彼に焦点をあて、フィンランドでの作品を中心にその生涯を追体験できるような展示構成になっています。


まず、特別展の冒頭では、フィンランドに根付く民族叙事詩『カレワラ』について解説していきます。様々な作品創造のルーツとなったこの叙事詩。実際の原画やドローイング作品を目にすることで、古のフィンランドに降り立ったような錯覚を感じるかもしれません。後に登場する様々な建築物や、家具、デザインにはこの『カレワラ』やフィンランドへのナショナル・ロマンティシズムがふんだんに生かされていることを実感できるはずです。


そして、ようやくサーリネンと彼の所属した建築事務所の作品が紹介されます。当然のことながら、建築物の現物は持ち出せないので、そのポートレートや模型、建築図面や透視図などを観ながら作品を体感するような流れとなっています。

サーリネンの最初の功績は、パリ博覧会のフィンランド館設計に始まります。その造りはフィンランドの歴史や民俗性を散りばめたものとなっており、まさに博覧会での印象を強めるものとなったことでしょう。

その後も、保険会社の建物や、フィンランド国立博物館の設計などに携わり、サーリネンと彼の所属する建築事務所は確固たる地位を築いていきます。

また、住宅建築の展示では、建物だけではなく、その内装や家具のデザインひとつひとつにサーリネンの想いが込められていたことがわかります。リキュールグラスに至るまでですよ!デザインがなんとも北欧らしく、個人的にはスタジオジブリ作品の『天空の城ラピュタ』に登場する飛行石のようなデザインがとても魅力的に感じました。

展示後半では、彼の作風がモダニズムに発展する様が実感できます。最終的には広い視野で物事を捉えるべきという彼のスタンスには個人的に共感でき、それが都市計画に発展することがよくわかります。中でもヘルシンキ中央駅の設計は美しく、ニューヨークのグランドセントラルを思わせる内装、要所要所にフィンランド伝承をモチーフにしている点も素敵です。

やがて、世界大戦が幕を上げ、彼の着手するデザインは評価されるなか実現に至らないというジレンマに直面していきます。そんな想いもあり、彼は49歳にして家族と共にアメリカに移住し、その土地で新しいサーリネンの建築を生んでいったのです。そして、彼の意志は、彼の息子たちによってまた受け継がれていく。。。

一人の建築家であり、僕は彼が冒険家のような立ち位置であったようにも感じます。仕事を愛し、家族を愛し、故郷を愛した。そんな彼が時代と共に変わる世界で何ができるのかを真摯につきつめていったことがとても魅力的に思えます。

ぜひ彼と同じ視点で、フィンランドでの建築作品に想いを寄せ、美しいデザインの数々に触れてみてはいかがでしょうか。

展覧会は9/20までパナソニック汐留美術館で開催中です。

◆公式サイト


※来館時には事前受付が必要です。

※公式サイト、図録、解説を参考に記事を執筆しています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?