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デザフェスの什器製作


デザインフェスタvol.57に出展するにあたり、什器を自分で作製しました。
主にデザフェス仕様の作りですが、イベント出展用の什器を作りたいという方の参考になればと、製作に使用した道具や素材、設計について書いていきます。

ブース全貌

①拘った点とデザフェスルール

・アンティークなデザイン

作品やお店のコンセプトに合わせて、塗装やエイジングなどで少し使い込んだようなデザインにしました。

・コンパクトカー(ホンダのFIT)に積める

全て積み込みつつ、人間が乗れるスペースを残さないといけないので、分解できる+長いところは最大でも150cmくらいになるように設計しました。

・組み立て分解が1人でできる

今回お友達に共同出展という形で手伝ってもらいましたが、今後1人で出展という可能性も考えてなるべく簡単に組み立て・分解できる構造に。

・ 空間の有効利用

デザフェスSブース(180×90cm)は狭い!狭いけど上は4mまでokなので、約2mの縦長構造で空間を効率よく使います。

・コストカット

なるべく家にあるもので、素材はできる限り安く。防炎ベニヤだけはどうしても金額が大きくなってしまいましたが、百均や家にあるものを使ってなるべくコストがかからない工夫をしました。
まあだいぶ予算オーバーですけども…。

・デザフェスの規約に沿った設計と材料

什器を作る上で守るべき規約はブースの枠からはみ出ないとことと、消防法に関することです。ここ何回かを見ていると多少細かいルールが変わっていますが、基本的に自作の什器は防炎でなければなりません。※卓上のものは除く
木材の場合、防炎スプレーはNGで、防炎協会のステッカーが貼られた素材しか使えません。※既製品は特に防炎である必要はないようです。
テーブルクロスを10cm以上垂らす場合も防炎である必要があります。コスト面も考えて今回クロスは使わないことにしました。

②設営と分解と運搬

・所要時間

設営、分解ともに1人でやると1時間弱かかります。2人なら30〜40分。※作品並べる時間は含まない

・必要工具

プラスドライバーと六角レンチ。ドライバーは電動のインパクトドライバー使いましたが、そんなに使用箇所多くないので手動でもいけます。

・運搬

分解するとディスプレイ什器や椅子など全て折りたたみキャリーワゴンに積めるので、女性1人(なんなら妊婦)でも運搬できます。
ワゴンはコストコで1万円程度で購入。よくあるコールマンのものとほぼサイズは同じです。耐荷重がコストコの方が少し多い程度。

ワゴンに乗せた分解後の什器

③製作過程と使用パーツ、工具詳細

・製作過程と所要時間

イレクターパイプの切断・組み立て 4時間
ベニヤの切断・サンディング(やすりがけ) 3時間
トリミング・エイジング 2時間
塗装・乾燥 3時間+乾燥3日
オニメナット、接続パーツの取り付け 3時間
取っ手・蝶番・マグネットの取り付け 3時間
追加のパイプの切断 20分
最終組立リハーサル 1.5時間
※準備片付け含む

大体全工程こなすのに7日+ホムセンに2回、材木屋さん1回、百均に1回足を運んでいます。

・棚と天板の固定

棚と天板はボルト+オニメナットを使っています。何度も組み立てと分解を繰り返す前提なので、穴側にはオニメナットと呼ばれるパーツを取り付けておきました。 今回はねじ込み式のものを使ったので、下穴を開けたところに六角レンチでナットをねじ込みます。※金槌で打ち込む方式のオニメナットもあります。
このとき、穴にボンドを塗っておくとボルトを抜いた時に一緒にナットも抜けるというトラブルを防げます。

オニメナットの取り付け

・板とイレクターパイプの固定

板をイレクターパイプに接続するジョイントがあります。 天板や棚板の固定には型番J46 ASS  SとJ113 ASS Sのプラスチックジョイントを使用しました。板側にはビスで固定して、パイプにガチャンとはめ込むことができます。 J46は2箇所ビス留めの穴がありパイプにしっかりガチャンとはまりますが、J113は穴が片側だけでパイプにははめるというより乗せるという感じです。

板をパイプに固定するジョイントパーツ2種

・流木の固定

麻紐をイレクターパイプにねじ式のジョイントで固定し、それを流木に巻きつけて縛っています。使用ジョイントはJ131 PA S。

流木の固定部
麻紐の固定に使ったジョイントパーツ

・製作に使った工具

DIYをする上で欠かせない工具たち。今回使用したものを紹介します。特に電動工具は効率を一気に上げてくれます。
今後もDIYをするなら購入するのもいいですが、それなりにお値段するので最初はレンタルがおすすめ。ホームセンターなどで貸し出しサービスを行なってるところがあります。

・ノコギリ
ベニヤの切断は手動のノコギリで行いました。ジグソーという電動ノコギリも持ってはいるのですが、真っ直ぐ切るのに技術がいるので、時間はかかりますがノコギリで慎重に切りました。電動工具でまっすぐ切りたいならジグソーより丸ノコの方がおすすめです。
ただ切断は大抵購入店に頼むとサービスか低料金でやってくれるので、お願いするのが1番確実です。

・サンダー
やすりがけをするのに使う電動工具です。ベニヤは大抵ささくれが結構あるので、やすりをかけないと運搬や販売時にトゲが刺さります。やすりがけは手でやってもいいですが、労力が半端じゃないのでテーブルなど大きなものはサンダーの使用をお勧めします。オービタル、ランダム、ベルトなど種類がありますがDIYならオービタルで十分です。紙やすりをセットしてアイロンのように使います。やすりは消耗したら交換。すごくうるさい(掃除機2台分くらいの騒音)のでご近所への配慮を忘れずに。
木屑もすごい量が出る上に細かいので、掃除などのことも考えて作業場所を選びましょう。

・トリマー
木材の角をとったり、溝を掘るのに使う電動工具です。先端につける刃(ビット)をかえることで角を丸くしたり波のような造形にしたりと色々でき、高級感が出ます。ただ、軽く角を取るだけならサンダーで十分なので、今回使用したのは私の趣味です。

サンダー(左)とトリマー(右)
トリミングしたテーブルの淵

・インパクトドライバー
電動ドライバーにネジを押し込む機能がついたもの。ビス留め作業が格段に楽になりますし、ドリルでの穴あけもできるので、まず電動工具を買うなら電動ドライバーがおすすめ。既製家具の組み立てにはインパクト機能はいらないので、幅広く使いたいならインパクト機能はなくてもいいかも。私はマキタのインパクトあり/なしが切り替えられるタイプを使っています。定価は高いのでヤフオクで中古を買いました。

・ノコギリ、石、ガラス片
一部工具じゃないけど。エイジング加工に使いました。引っ掻いたり、打ち付けたり。

エイジング
左は鋸の引っ掻き跡、右は小石で叩いた跡。

④素材

・防炎ベニヤ

消防法に基づき、デザインフェスタでは使用する木材や布に防炎性能が求められます。というわけで、今回テーブルの天板や棚板には防炎ベニヤ(厚さ1.2cm)を使用しました。普通のホームセンターでは取り扱ってくれないので、近所の個人にも売ってくださる材木屋さんにお願いして取り寄せていただきました。基本HPなどはないところが多いので電話で問い合わせました。
裏には防炎のステッカーがついていて、全面に「バンレス防炎合板」という赤い字が印刷されています。
まるまる1枚買い取りなのでサブロクと呼ばれる910×1820cmサイズ、デザフェスSブース一つ分の巨大板です。そのままだと車に積めないので、半分(180×45cmを2枚)に切っていただきました。
値段は大体8000円+税。※店によって変わります

防炎ステッカー

・塗料

ベニヤの色そのままだとアンティーク感が出ないので、濃いめの茶色にすべくオイルステインを施しました。
使用した塗料(オイル)は北三株式会社のワトコオイル。塗るというよりは木に染み込むので染めると言った方が正しいかも。
メリットは木目がいかせること、ムラになりにくく初心者にも扱いやすいところ、色が豊富で茶色系、白、グレー、赤系など様々な木種が再現でき、混色もできます。
デメリットは完全に乾くのに時間が(天気が良くて数日)かかるところ、木材によって色の乗り方が変わってしまうところ、塗膜ができないので防水性が低いところ。
今回私はエボニーとダークウォルナットを2:1で混ぜて使いました。濃いめの茶色になります。ベニヤは比較的オイルがしみこみやすい素材なので、色が濃く出ます。
塗る時は刷毛(はけ)でもいいですし、布に染み込ませて塗ってもokです。刷毛は百均にもありますが抜け毛がひどいのでホームセンターなどでそこそこ質の良いものを買った方がストレスなく綺麗に仕上がります。布を使う場合は、タオルなどよりはTシャツのような繊維クズの出にくいものがおすすめです。
塗り終わったら染み込んでいない余分な塗料を布で拭き取ると乾燥までの時間が短縮できます。
独特のにおいがあります。有機溶媒ではないのでそんなに不快なにおいではないですが、室内に置いておくと室内がワトコオイル臭になります。
前述のとおり耐水性は弱いので、水濡れする可能性がある場合はニスを塗ります。艶出しやマットなど使うニスによって質感は選べます。わたしは自宅の食卓テーブルにはウレタンニスを使用していますが、ワトコオイルを厚塗りしているとはじくことがありました。

ワトコオイル公式HP
https://www.hoxan.co.jp/watco/products/oil/

オイルステイン後のベニヤ

・イレクターパイプ

矢崎化工というメーカーの製品で、金属パイプの表面にプラスチック被膜を纏わせたもの。
デザフェスの規約で什器の脚に普通の木材が使えないので、土台はイレクターパイプがおすすめです。丈夫で軽く安価、ホームセンターなどで容易に入手でき、専用カッターがあるので切断も自宅で行えます。※ただし何本も切るのはかなり重労働パイプ同士を繋ぐジョイントの種類も豊富なのでかなり自由な造形が可能です。
大抵のホームセンターで扱っているのは基本径である28mm、色は白、黒、緑あたりが多いです。公式通販ではこのほかにも青や黄色、メタリックカラー、黒黄の縞なども手に入ります。通販は送料がかかるのがデメリットですが、曲げ(有料)やカットを行ってもらえます。

ジョイントパーツはメタルジョイントとプラスチックジョイントがあります。
メタルは六角レンチでつけ外しが可能ですが、プラスチックは基本的に専用接着剤でくっつけて固定する前提で、一度つけてしまうと剥離ができないので、ジョイントパーツを外したい時はパーツを破壊するしかありません。
プラスチックジョイントを使用して分解できるようにしたい場合は、パイプの端にテープを巻いて厚みを出し、ジョイントにねじ込む方法があります。ただし強度はメタルや接着剤使用時に比べて弱いのでご注意。アクセサリー展示くらいなら問題ないですが、重いものをのせたりぶら下げたりすると外れる可能性があります。
今回私は主要部分はメタリックジョイントを使いました。

矢崎公式通販
https://www.yzk-shop.com/shop/?gclid=EAIaIQobChMItP7Fm-Wh_wIVTMVMAh1HVAkDEAAYASAAEgKLjPD_BwE

イレクターパイプとジョイントパーツ

⑤設計

初期の設計では、運びやすさ重視でベニヤの長さをできるだけ短くするために、脚ユニットを3つ作って天板は段違いで設置する計画でした。収納やディスプレイに使う棚板も1枚。
天板奥行きは60cmを計画していましたが、 Sブースでは狭くなってしまうのと板の効率的な活用を考えて最終的には45cmにしました。ジョイントは濃い緑がメタルジョイント、薄い緑がプラスチックジョイント。
設計には大体の構造を考えたい時は消したり色付けをするのが楽なiPadのメモを使い、清書したり正確に比率や大きさを把握したい時は無印の方眼ルーズリーフで手書きしています。今回は清書するほどのものではないのでiPadのみ。

初期設計図

デザフェス1ヶ月半前のイベントで使用した時は、自宅で使用していた棚の上に天板を乗せることで、イレクターパイプの使用本数を大幅に削減しました。試しに脚ユニットは1つだけにしてみました。
ユニットの構造も「日」の字にする予定でしたが、床につく部分の横棒は無くして脚の先にねじ式のアジャスターを取り付けました。5cm程度伸び縮みするので地面の凹凸にも対応できる点はよかったです。
ただ引っ張ると机の脚が左右に動いてしまうので、ぶつかったりした時に転倒の恐れありでした。

初期の什器

最終的には安定性を出すため、棚の横にも脚ユニットを1つ追加。棚板で見えませんが脚ユニット同士を1本のパイプで繋げて左右に開かないよう安定させてあります。

棚の中が見えてしまうのは見栄えが悪いので扉をつけることに。ただの板では味気ないので、なんちゃって引き出し風にします。

最終のディスプレイ予定図

材料は土台のベニヤ(天板作った余り)、なんちゃって引き出しの薄いベニヤ4枚(Seria)、取っ手4つ(Seria)、ドア用マグネット1組(ホムセン)、蝶番(ホムセン)1組、ビス、木工用ボンド。

まず薄いベニヤを切ります。3mm以下くらいの厚さならカッターナイフで何度か溝を掘れば切れます。

Seriaのベニヤと取っ手

土台のベニヤに木工用ボンドで薄いベニヤを貼ります。ボンドがはみ出るとオイルステインをはじいてしまいますし、塗りすぎると水分で薄いベニヤが曲がるので塗りすぎ注意。貼り付けたら乾くまで重しを乗せておきます。先に塗料を塗ると塗料の水分でベニヤが曲がることがあるので、塗装は貼り付けてから。塗装ができたら取っ手をつける位置にドリルで穴を開け、取っ手をネジでつけます。

土台に薄いベニヤを貼り付けた

扉の取り付け蝶番(ちょうつがい)で棚板に扉をつけ、扉の上部と天板の裏側にドア用マグネットをビスで取り付けます。場所がズレるとくっつかないのでご注意。これにてなんちゃって引き出しつき扉が完成。通路側にいても中のものが取り出せてとても便利でした!

扉の取り付け

・設計のポイント

なるべく板やパイプの切断回数を減らすと手間が減るので、長さに制約がないなら規格の長さのまま使う方が楽です。
数字が決まっている部分があればその他の部分はそれに合わせて決めていきます。

今回私は既成の棚を使ったため、天板の高さが87cmと決まっていたので、脚ユニットの高さはそれに合わせて作りました。アジャスターで細かい調整ができるので、実寸より1cm程度低く作ってあとから調節しています。
脚ユニットの幅は天板の45cm+3cmで、奥側は上にパイプを伸ばすのでその分はみ出るように作っています。天板とパイプをつなぐ固定パーツは、脚ユニット側のジョイントパーツに重ならない位置につけます。

天板と脚ユニット

ジョイントパーツの寸法や厚みなどは公式オンラインショップの各製品情報で見られます。

公式オンラインショップの画面

⑥強度

・イレクターパイプ

経費と重量の問題でパイプの本数はなるべく少なくしたいですが、あまりにケチると少し触っただけで歪むゆるゆるの構造になってしまいます。
脚と脚の間をつなぐ横棒をつけるなど、補強する構造はある程度必要です。
箱型のように組むとイレクターパイプはかなり強く、大人が乗っても大丈夫なくらいの強度のものが作れます。
ただし分解のためにプラスチックジョイントを接着剤なしで使うとかなり強度は落ちるので注意です。

・ベニヤ

今回厚さ12mmのものを使用しました。長さ80cmくらいまでなら両手をついて押しても問題ないくらいの十分な強度がありますが、長いものだと重いものを乗せたり押した時たわみが出ます。乗せるものの重さにもよりますが、100cmを超える長いテーブルにするなら両端に加えて真ん中にも支えの脚を入れる方が無難です。
ベニヤは木目の方向を気にする必要はないので、カットは自由に行って大丈夫です。

⑦費用

今回防炎ベニヤとイレクターパイプ、ジョイントその他諸々百均材料を合わせて約25,000円ほどでした。ジョイントは一部メルカリで中古を買ったので少し安く済んでいます。概算ですが、内訳は下記です。

防炎合板 ¥9,000
パイプ ¥5,000
ジョイント ¥6,000
取っ手など百均素材 ¥700
蝶番 ¥3,000
ナット、ビス ¥1,000

この他入れていませんが自宅にあった塗料やイレクターパイプ接着剤、イレクターパイプカッター、サンディングペーパー(紙やすり)、麻紐なども入れると+5,000円程度になります。
流木は川で拾ったためタダでした。買うとこのサイズはたぶんそこそこお値段します。

以上が今回作成した什器の概要です。
オイル以外の塗料やディスプレイ什器についてもまた別の記事で書けたらと思います。
質問などある方はTwitterやInstagramよりメッセージくださいませ。

https://www.instagram.com/ wunder_kassette

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