イレクターパイプ什器の設計の仕方
矢崎化工から出ているイレクターパイプという商品。ホームセンターにも置かれているので見たことがある方もいるかもしれません。金属製のパイプの表面にプラスチック加工がされているもので、プラスチックや金属製のジョイントで繋げて使います。専用の器具で綺麗に切断でき、ジョイントも種類が豊富なので自由度が高いのが特徴です。分解や組み立てもできて搬送しやすく、デザフェスのように防炎の規定が厳しいイベントでも使えるのでイベント什器の骨組みを作るのにもってこいです。
パイプやジョイントの色はアイボリー(白)とブラックが基本ですが、通販や店舗での取り寄せではグレーやグリーン、メタルカラーなど色もかなり選べます。
パイプは太さが28、32、42mmから選べますが、28mmのものが基本サイズで1番ジョイントの種類も豊富ですし、強度もしっかりあるので基本はこちらを使えば大丈夫です。
公式通販サイト
https://www.yzk-shop.com/shop/
ꕥ作品例ꕥ
便利なイレクターパイプですが、いざ設計するとなると少し慣れが必要です。
今回は分解できる試着室を例に、私の設計手順をご紹介します。
①構造を決める
まずはざっと作りたいものの絵を描いていきます。
比率は大体でいいんですが、苦手な方は方眼紙を使うのがおすすめ。
ブースのサイズと相談しながら、大体の寸法を決めます。
コの字に組んだだけだと歪みがでるので、なるべくロのかたちになるように、また70cm以上の長さになるところには貫(ぬき、補強のための棒)を入れつつ設計します。※図は他で考えた棚の設計図
下図がとりあえずで考えた試着したの構造。緑は固定で、青いカーテン部分はひいて開け閉めできます。左奥に突き出ている部分には棒を吊るしてハンガーラックにします。
大きさは大体幅600mm、奥行900、高さ1800、ハンガーラックの突き出しは300。
箱に入るサイズになるよう、長い部分は分割してメタルジョイントで接続します。200サイズの箱に入れる想定なので、高さ部分の180cmは分割します。
ついでに貫を入れて補強。
②ジョイントを決める
◆ジョイントについて
特殊な角度でない限りは大抵のジョイントは存在します。メタルジョイントはやや制約がありますが、プラスチックは種類が豊富。公式サイトでは各ジョイントの使い方や寸法が見られます。
プラスチックジョイントは基本的に専用の接着剤でくっつけて使用します。かなり強固にくっつくので一度つけると外せません。どうしても外したい場合はジョイントを破壊するしかありません。
メタルジョイントはドライバーと六角レンチで分解・組み立てができます。ドライバーや六角レンチは各サイズがセットになったものが百均でも売られています。
◆ジョイントの選定
構造が決まったら必要なジョイントを調べます。
公式ページにて各パーツの使い方や寸法が紹介されています。
各部材紹介ページ
T字のものなどは下図のように中で分断されていて3本を接続するAタイプと、貫通していた2本を接続するBタイプの2種類があるので間違えないように注意です。
◆設営を楽にするコツ
1本1本のパイプを全部バラバラにする構造だと現地で組み立てるのが大変なので、ある程度はユニットとしてあらかじめ自宅で組み立てておく構造にすると設営が楽です。
◆軽量化と経費削減
ジョイントにパイプをさしこんだだけではすぐに抜けてしまいますので、そのまま使うのは崩壊の可能性があって危険です。
くっつけずに抜き差しして使いたい場合はメタルジョイントを使うのがおすすめですが、メタルジョイントはお高いうえに重いので使用数は減らしたいところ。
下の図はメタルジョイントのみでの設計とプラスチックに替えられるところは替えた場合の設計図比較です。
上記2つはほぼ同じ構造ですが重さが約5kg、材料費も3000円ほど違います。
※強度面を考えて足元の設計変えてしまったので、上図の方も下図と全く同じ構造にすると価格差はさらに増えて4000円程度になります。
貫通部分ならプラスチックジョイントのJ131はネジ留めで固定できるのでプラスチックジョイントでも位置を固定することができます。
裏技として、パイプの接続部にマスキングテープなどを2周ほど度巻いてジョイントに捩じ込むという方法もあります。強度はメタルに比べて格段に落ちてしまいますが、あまり構造的に負担のかからない部分なら使えます。
サランラップを巻いてみたこともあるんですが、マステの方が安定感は良かったです。
③パイプの長さを決める
最後にパイプの長さを決めます。
ここで注意ですが、設計図に書き込むときは単位を統一しましょう。mmとcmを混ぜて書くとややこしいことになりますしミスの元です。小数点がない方がわかりやすいですし、材料の寸法はmmで表記されていることが多いのでmm書くのがおすすめです。
◆ジョイント分の長さを考える
注意しなければならないのはジョイントをつけるとその分長くなることです。
例えば幅を900mmにしたい場合、900mmのパイプの両端に「 の形のプラスチックジョイントをつけると、全長は36mmずつのびて972mmになってしまいます。そのため全長を900mmにするにはジョイントの72mm分、パイプを切る必要があります。メタルジョイントだとさらに長くなります。
パイプの切断は女性でもできますが結構大変(1箇所切るのに慣れないと5分以上かかりますし、15箇所ほど切ったら手にマメができて潰れました)なので、既成のサイズをそのまま使ってなるべく切らないで済むようにすると楽です。
置き場所や置くものの制約で厳密に長さを決めなければならない場合はそれに合わせてパイプの長さの方を調節します。
ジョイントの細かい寸法は各商品のページに記載があります。ジョイントの厚みは約2mm〜2.5mmです。
◆完成寸法から決めるか、既成のパイプをそのまま使うか
今回設計した試着室は、高さを約1800mm、幅約600、奥行約900にして、横にはハンガーラックを吊り下げるための突き出し部分を約300とります。
幅+ハンガーラックの突き出しを合わせた長さがSブースの900mmを越えなければ、他は大体でOK。
左図で基本の使用パイプを上段ユニット900mm、中段900と600、下段の手前を900に設定しました。あとは右図のようにジョイントの寸法を見ながら他のパイプの長さを計算します。
1番ミスするところなので慎重に。
こちらが完成図。
◆材料の書き出し
ここまで決まったらあと少し。
使用するジョイントとパイプを書き出します。
売られているパイプは長さが300、600、900、1200、1500、2000…と長さが決まっています。
なるべく無駄なく使える長さを選んで買ってカットします。
◆専用器具の購入
パイプカッターはだいたい売り場に一緒に並んでいます。大量に切ると切れ味が落ちますが替え刃もあります。お値段は税込4000円ちょっと。
接着剤もあります。少量でしっかりくっつくのでイベント什器くらいなら1番小さいものでOK。
◆パイプを自分で切らないで済む方法
パイプをカットしたくないときは通販がおすすめです。送料がかかりますが、綺麗に正確にカットしてくれますし、どの長さをどうカットするか考える手間もありません。値段は長さによって変わりますが、どの長さを買っても割高になるなどはなかったです。(私が買った時の話なので今はわかりません)
また、曲げ加工(有料)もしてもらえるのでおしゃれに仕上げたい時などには利用するといいと思います。
設計は以上でおわりです!
Beebirdさんが作ったら写真を送ってくださるそうなので、いただいたら後日追加いたします。
𖣔追記𖣔
デザフェスにて写真撮らせていただき、ご本人様に許可もいただいたので写真載せます。
実際に使用しましたが、十分な広さで快適でした。長い方の辺をもう10cm狭くしてもいけそう。
ꕥ当設計図についてꕥ
作ってみたい方は今回ご紹介したレシピ自由に使っていただいて構いません。
作ってみないと設計が成功かはわからないんですが、経験上は使えるものになっていると思います。
作った什器のイベントなどでの使用もご自由にどうぞ。
ただし、図や文の転載や配布・販売はおやめください。保存はしていただいて構いませんが、利用は個人の利用の範囲内でお願いいたします。
布の寸法や、詳しい組み立て方の記事を作成しましたので参考にしてください。
https://note.com/wunder_kassette/n/nfdb5c6e144cf
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