言葉の使い方には気をつけましょう

能登半島の地震に対する自衛隊の災害派遣に関して、「投入が遅い」「人数が少ない」という批判が出ています。これは熊本地震と比較してのことのようです。しかし、熊本には南九州を担当地域とする6000人規模の第8師団がいました。能登半島には陸上自衛隊の大きな基地はありません。それを考えると、震災初動に関して、簡単には比較できません。そもそも、現時点では根拠不明です。もちろん、「私はそう思う」派の方々の意見は勝手で自由なのですが。

そんな中、立憲民主党の泉健太郎代表が「逐次投入で遅い」と発言しました。言葉を知らない、とはこの事でしょう。辞書を引かないのでしょうか。

一部メディアでは、泉氏を援護するかのように、「(太平洋戦争時の)ガダルカナル島の戦いで、部隊を小出しにして撤退を続けた旧日本軍になぞらえた」と、補足解説した記事があったようですが、これはさらに恥の上塗り。

だって、戦争の際の逐次投入の最大の問題点は、投入する兵力を小出しにすると、次々と撃破され、戦死者が増えていくからです。念の為、強調しておきますが、「戦争の際」です。

今回、投入された自衛隊員の皆様は、能登半島の現場で、戦死していません。そもそも、根本的に逐次投入ではなく、増員です。ガダルカナル島の戦いとは全てが異なります。誰かの入れ知恵かは知りませんが、インパクトがあると思って、わざわざ使った言葉が間違っているなんて、最低です。

NHKの前会長であった前田晃伸氏が、NHKの次期中期計画案に対するパブリックコメントを寄せていたことが、ちょっとした話題になっていました。日刊ゲンダイの記事によると

・意見書は400字詰め原稿用紙にボールペンで手書き

稲葉NHKに喧嘩を売った…前会長の前田晃伸氏はみずほFG出身の「無類の硬骨漢」

公開日:2024/01/20 06:00

・自分が導入した人事制度改革の見直しは残念

稲葉NHKに喧嘩を売った…前会長の前田晃伸氏はみずほFG出身の「無類の硬骨漢」

公開日:2024/01/20 06:00

と言う趣旨だったようです。

まず気になったのは、「400字詰め原稿用紙にボールペンで手書き」です。これは、前田氏が日常的にコンピューターを使い文章を書くことが出来なかったからでしょう。全く褒めたものではありません。失礼な言い方ですが、そんな人がメディア企業のトップになることはそもそもの間違いです。私的には「ボールペンの手書き」も気になります。嫌です。何故、万年筆でなかったのでしょう。巻き紙に筆文字とは言いません。何故、ボールペンだったのでしょう。これは惨劇です。

自分は間違っていないと、意見を述べるのは自由です。でも、昭和の銀行流の、50代の職員を退職させる事によって人件費を削り、業績を上げたように見せるという、経営者として根本的にセンスの無い手法は、褒められたものではありません。銀行的な、50代の一律出向、という手法は過去のものです。
今や、ご自分の古巣であったみずほ銀行をはじめとして、日本の銀行は、銀行のカルチャーの基盤となっている人事制度を変えないと人材確保がままならないと、強い危機感を持って人事制度を改革しているのですから。

それと気になるのが、この記事の中での前田氏の人となりを説明する文章です。財界関係者の言となっています。

「前田氏はみずほフィナンシャルグループ(FG)の社長・会長時代から誰よりも先に出社し、真冬でも暖房を入れず、ダウンを着込んで我慢するほどの硬骨漢だ」

稲葉NHKに喧嘩を売った…前会長の前田晃伸氏はみずほFG出身の「無類の硬骨漢」

公開日:2024/01/20 06:00

なんでしょう、「硬骨漢」って。辞書を引くと、「意志が強く金力や権力に屈せず、みだりに自分の主義を曲げない男」(大辞林)とあります。

この「硬骨漢」と言う言葉の使い方、間違ってますよね。
前田氏は「自分の考えは間違っているかもしれないとも考えない頑固者」であり、「暖房を入れずダウンを着込んで、寒さを我慢しながら働く」という意味も無い精神主義の人、としか見えません。本当にこんな事をしていたのが逸話として価値があると考えているなら、それは太平洋戦争中の、竹槍でB29を墜とす、という姿勢と何ら変わりはありません。会社のトップがこんなことをしていると知ったら、若い人は誰も入ってこないでしょう。このような精神主義を良いとするから、みずほ銀行はデジタル化が遅れたのではないかと考えます。
みずほ銀行に関係する皆様は、過去のトップのこのような逸話が流布することを防ぐ手立てを講じる必要があります。
(余談ですが、この手の「誰もよりも先に出社し」という経営者への褒め言葉を見ると気になるのです。だって、公共交通機関で出勤したわけではないですよね。会社からの差し向かいの車で出勤したのでしょう。それに、他の役員や社員は居なかったとしても、彼らの秘書はどうしていたのでしょう。仕事とは言え、社用車のドライバーさんや秘書の皆さんは、お付き合いしていると思われます。美談には被害者が隠れていることが多いと思うのですが、いかがでしょうか。)

わざわざ用法を間違って使った言葉によって擁護され、さらに自らの格を下げた方々のお話でした。あぁ、恥ずかしい。自分も気をつけなきゃ。


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