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2013年10月 泉まくら / マイルーム・マイステージ

 僕がずっと感じていた違和感を、サラッと払拭してくれたのが彼女だった。

 冒頭からよくわからない事を言っていると思わないでほしいのだが、泉まくらはサラっとそれをやってのけた。その違和感というのが所謂フィメールラッパー特有の‘男勝りなラップ’だ。これまでのフィメールラッパーと言われる女性のラッパーの多くは、男のラッパーがそうするように、力強くラップをしていたように思う(ほぼ男社会であるこのシーンではそうせざるを得なかったのかもしれないが)。そこにあった僕の感想は「もっと女性は女性のままラップすれば良いのに」だった。そこにあまりリアリティが無かったのだ。無かったというよりは、感じられなかった、というべきか。

 女子が女子として、素直にラップしたのが泉まくらで、それは本当に滑らかに耳に入り込んできた。

 そして勘違いしないでほしいのは、耳触りが良い声質だからと言って、(悪い意味で)聴きやすいラップというわけではない。事実、彼女が世間で話題になった楽曲『balloon』のリリックは、一部の女子には耳が痛かったに違いない。痛い所を突くリリックが、スルっと耳に入ってくるから、そこに中毒性が生まれるんだろう。そして新作「マイルーム・マイステージ」もご多分に漏れず、痛くて切ない。

 配信のみのリリースだった「candle」に関しても<似る仕草や語尾も 思い出したくない過去になるかもなんて 考える暇ばっかり ありすぎてうんざり>なんて言われたら、もう僕でも切ない。だけど今作は前作より更に、そんな中でも救い、というか光が見え隠れする所が、進化している様に思えた。

 泉まくらは、今まさに‘部屋’の中から出ようとしている。

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