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2019年6月 舐達麻 / FLOATIN'

 "バール買いに行かせたイマフジ 仕事バックれたタカハシ 借りに行かせた武富士〜"から始まる、舐達麻の「FLOATIN'」は、もはや冒頭のBAD SAI KUSHによるバース全てがパンチラインと言っても過言ではない。しばらく忘れていた久々のワクワク感を覚えた。それはSCARSやMSCを始めて聴いた時に感じた「自分にとっては非現実だけど、それが現実に起こっている人達によるリリックの怖さ」への興奮である。

 しかしこの曲のリリックを最後まで咀嚼すると、ワクワクとか迂闊に言っていられない。詳細をここで語るのは無粋なので触れないでおくが、壮絶な”彼らの”現実がそこには描かれていて、そのリアリティが楽曲に強力な厚みを与えている。Swanky Swipe「Bunks Marmalade」に収録されている伝説のラスト曲「評決のとき」の凄みに近いものを感じた。

 舐達麻の存在そのものについても語っておきたい。埼玉県の熊谷近辺のクルーで、現在いる3人のラッパーそれぞれの声が高・中・低とバランスが良く、誤解を恐れずに言うと見た目は完全にチンピラ。自分が彼らの存在を知ったのがSEEDAがやっているニートTOKYOというYouTube チャンネルの動画にメンバーのうち2人が出ていて、その見た目に「おっ!」となったのが最初の出会いだった。

 ビートについては最近の日本のヒップホップの若い人たちが比較的トラップ寄りの楽曲が多い中、彼らはタイトなビートで淡々とラップをしていて、現行のシーンへのカウンターとして非常に面白い存在だと思った。また、いわゆるストーナーラップの分類にも入ると言っていい程に、マリ◯ァナ関連のリリックも多く、PVやインスタのストーリーでも心配になるくらい(笑)吸っている。とまあ色々言ったが、とにかくこれぞ日本のリアルヒップホップ!と言いたいだけである。聴いてください。

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