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2020年3月 GEZAN / 狂(KLUE)

 盆踊りとか阿波踊りに代表される、ほぼ同じBPMでひたすら踊り続ける神事は、トランスミュージックとかテクノのパーティーと同義だと思っている。疲れ果てるまで踊って意識が少しぼやけてきたあたりから、悦楽を覚えながら神とか先祖とか現実の目に見えない何かと一体になっていく作業なのではないかと。だから音楽って、映画とか読書とかと違って、人間の根源的な部分に訴えかけるエンターテインメントだとも思っている。

 GEZANの最新作「狂(KLUE)」は上記のように、ずーっと同じBPM(全曲BPM100縛りらしい)でアルバムが進んで行き、プログレのように長い1曲の中で様々に展開していくような感覚に陥り、どんどんトランス状態になっていく。音楽業界や社会、もはや大きく”時代”への忖度は度外視し、持論と極論(←でも無理は言ってない)を、時に咆哮を、時に人懐っこい声とメロディーを、厚みのあるバンドサウンドとミックスエンジニアの内田直之によるダブ処理された音に乗せて撃ち放ち倒している。それでいて郷愁をも感じさせつつ、使い古された言い方だけれど、本当にモンスターのような1枚が産まれている。

 また、この作品をカテゴライズする事が無意味なほど、オルタナティブロックがダンスミュージックのビートを丸呑みして、それが内側でずっと胎動しているような感覚がある。本当のパンクは今やダンスミュージックにあるんじゃないか?っていうくらい、今作を聴くと、ダンスミュージックやクラブの危うさにこそ、オルタナやパンクを感じざるを得ない。

 ここへ来て最後に懺悔というか謝罪ですが、このアルバムを聴くまでちゃんとGEZANの作品を聴いた事がありませんでした。すいません。本当に自分のアンテナのオンボロ具合を呪いたいです。去年のフジロックの映像を観てブチ抜かれてしまって、大変楽しみにアルバムを待っておりました。そして本当に素晴らしい、期待を余裕で超えてくれて、早くも2020年を代表する1枚が届いて心の底から興奮しました。ありがとうございました。

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