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2019年8月 SCARS / THE ALBUM

 2006年にリリースされて、その後の日本語ラップシーンに絶大な影響を与えたにも関わらず、長らく廃盤状態で中古市場でも高額な値段がついていた伝説のアルバムが遂にCDとしてリイシューした。そもそも2006年という年は大豊作の年で、SCARSにも所属しているBESのいるSWANKY SWIPEの「Bunks Marmalade」、同じくSCARSのメンバーであるSEEDAの「花と雨」、MSCの「新宿STREET LIFE」、韻踏の「TRASHTALK」も2006年にリリースされている。こういう名作の怒涛のリリースも、シーンに与えた影響は大きいだろう(SEEDAは一年に2枚も歴史的な名盤をリリースした事になる…)。

 スター集団”SCARS”のファーストアルバム「THE ALBUM」は完全に日本のヒップホップシーンをガラリと塗り替えた本物の名盤である。そもそも何を塗り替えたのか。このアルバムを聴いてもらえればわかるのだが、”ハスリン”とか”ドラッグ”とかっていうワードがバンバン出てきていて、でもそれが決してUSのリリックを真似しているだけではなく「あ、この人達本当にやってるな」というあの匂い。今では日本のラッパー達がそういったワードをラップする事に良くも悪くも驚かなくなったが、このアルバムが出た頃は所謂”ハスリン・ラップ”と言われる類のものは少なかった。そして各メンバーのラップの個性の強さ。マイクリレーなんて生易しい言葉では表現しきれない怒涛のスタイルウォーズである。

 そして特筆すべきは(この連載でも散々語ってきたが)やはりBESのスキルがとんでもない。①から早々にあのビートに対して絶妙に後ろ体重なフロウを聴かせてくれるが、③なんてもうトラックに対してのアプローチが終始3拍子のフロウ(衝撃)。トラップなんかが流行るはるか前にBESがそういうアプローチをやっていた事は声高に言っておきたい!またBESだけでなくこの頃のキレッキレのSEEDAも、SCARS的リリックの先導者であるリーダーのA-THUGも、本当にこの頃からキャラ立ちがすごい。ほんと良いアルバムが歴史に埋もれずちゃんとリイシューしてくれた事に本当に感謝。

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