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2019年10月 Ellen Doty / Come Fall

 Kan Sanoさんが好きだ。「だったら彼のアルバムを取り上げろや」が正しいツッコミなのは承知の上で別の作品を取り上げます。私の古巣であるHMVのオンライン企画「無人島 ~俺の10枚~」にKan Sanoさんが2度目の登場をしていて、やっぱり好きなアーティストが無人島に持っていきたいと思っている作品は当然気になるわけで、その中に今回紹介する作品があった。

 このEllen Dotyというシンガーはカナダ出身で、2014年に「Gold」というアルバムでデビューし、本作「COME FALL」は2枚目のアルバム。まずはジャケを見て気になって(私はバカで単純だからこういうモノクロ写真のジャケに弱い)、それで聴いてみたら、まあ良いのなんのって。

 最近は音数が多くて音圧が強めのモノが巷に溢れかえっているので、ボーカル/ピアノ/ドラムというミニマル編成な音楽を久しぶりに聴いてとても落ち着いたというか、呼吸ができる隙間があるというか、とにかくすごく沁みたし、希望としては午前4時に部屋を真っ暗にして聴きたい(勝手にやればいい)。声もソウルフルだけど、ただただ強いとかではなくて、儚さと強さと、基本的には滑らかだが本当に僅かなザラつきと、深淵な包容力。それをきっちり支える抑えたピアノとドラム。この2つの楽器隊の入り込み方もすごく絶妙で、歌に寄り添ったり、歌の隙間にスッと入ってくる。それに、このミニマル編成の中にドラムがある事で、たゆたうピアノにビシっと輪郭を与えてくれて、その上でボーカルが優雅に舞う。すごく良い編成。

 しかもこれ、2018年のリリースで、また自分のアンテナの弱さに辟易しました。悔しかった。それと、更に余談だけれど、このアルバムを知って色々調べていたら国内盤のライナーノーツを書いたのが、前職の先輩(Quiet Cornerの山本勇樹さん)だったという…。あー、もっと早くに教えてくださいよ。

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