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2016年9月 Campanella / PEASTA

 今、地元東海地方に限らず日本中の若手の中でもここまでフリーキーなフローで、かつ、しっかりリリックを聴かせるMCはいないのでは?と思うほど、圧倒的なラップスキルを誇るMC、CAMPANELLA(カンパネルラ)の2ndフルアルバム。

 本作『PEASTA』では、傑作の呼び声高い前作『VIVID』よりもBPM遅めのレイドバックサウンドが主体となったトラックの上で、彼の持ち味であるフリーキーなラップを聴かせてくれている。前作のトラック群がラップと同じくフリーキーかつトリッキーな音が多かったのとは打って変わって、本作のトラックはCAMPANELLAのラップをより‘聴かせる’ことに成功しているし、フローばかりに耳が行きがちな彼のラップの、もう一つの顔である言葉選びの面白さをより際立たせている。

 私は彼の言葉選びの面白さの中でも、特に痛烈なリリックが好きだ。本作では「あいつのラップH&M / どうせみんなどっかにすぐに捨てる」 「安い音楽を聴いて高い服を着る」といったドキっとさせるようなラインがそこかしこに見受けられ、しかもそうした痛烈なリリックが、他人に向いているというよりは自戒の念のように聴こえ、それが本作の素晴らしい点なんだと思う。自身を掘り下げた思慮深いリリックが多く、特にM10『NINE STORIES』の「写真にいいねをして良い気分に浸るとなぜか遠くなった気がしたstreet~」から続くラインなんかは、並みのMCでは出てこないのではないだろうか。

 本作でCAMPANELLAは、持ち前の素晴らしいフローを超越し、思慮深いリリックを書き、そしてキッチリ聴かせ、1ラッパーとしてのネクストレベルに到達したと言える。

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