【2023 U19 欧州選手権 MVP】アッズーリの新星 ルイス・ハサは “Nextデル・ピエロ” になれるのか

ネクスト・ジェネレーション


次の新星は誰だ。


世界中のサッカーフリーク達は常に新たなスーパースターの出現を求めている。

それに呼応するように、ロナウド・メッシ時代が終焉を迎え、いよいよムバッペ・ハーランド時代に突入するのかと思いきや、ジュード・ベリンガム、アルダ・ギュレルら下の世代が今夏の移籍市場を騒がせており、既に次のサッカー界のアイコンとなるべくネクスト・ジェネレーションが鎬を削り始めている。

そんな群雄割拠の戦国時代にまた一人、新星が現れた。


イタリア代表の20年ぶり4度目の優勝で幕を閉じたUEFA U-19欧州選手権2023にて、MVPを獲得したルイス・ハサ (Luis Hasa)だ。

ルイス・ハサは5試合374分のプレータイムで1ゴール4アシスト、11本のキーパス(アシスト未遂)を記録し、次世代のスター候補生として欧州にその名を轟かせたのだった。

選手プロファイル

ルイス・ハサ

ルイス・ハサ

ルイス・ハサは2004年1月6日、イタリア・ラツィオ州にある人口2万6千人の街、ソーラ生まれのアルバニア系イタリア人の19歳である。

ソーラ出身の現役選手には元イタリア代表CB、ザッパコスタがいるが、イタリアサッカーのカテナチオ時代からの脱却を証明するように、この街のスーパースターも守備的選手から攻撃的選手に移り変わろうとしている。


ハサは172cmと小柄ながら、ユベントス・プリマヴェーラの攻撃的MFとしてNo.10を背負い、アンダー世代でも常に中心選手として攻撃のタクトを揮い続けている。
攻撃的サッカーを信条とするイタリアサッカー界期待の選手であり、その体格、ポジション、所属チームからNextデル・ピエロという声もサッカーファンの中から上がり始めているほどだ。


憧れの選手はCR7

「Next デル・ピエロ」 往年のサッカーファンにはたまらない響きではあるが、当の本人の憧れとするプレイヤーは、現代の若者らしく、クリスティアーノ・ロナウドとのことだ。

クリスティアーノ・ロナウドがユベントスに在籍していた際、クリスマスパーティーでユース世代との写真撮影の場があったのだが、「憧れのロナウドとの面会に興奮を隠しきれなかった」とハサ本人が語っている。


プレースタイルは香川真司

そんなハサのプレースタイルについて掘り下げていこう。
本人はクリスティアーノ・ロナウドに憧れを抱いていると語っているが、そのプレースタイルは全く異なるものだった。U-19欧州選手権や、ユベントス・プリマアヴェーラでのタッチ集を一通り見た私が抱いた感想は、


“香川真司じゃないか!”


プレーを見ていて目に留まるのは、狭い場所でも失わない繊細なボールタッチ技術、重心の低いドリブル、高レベルで両足を使い分けるキックである。

特に2タッチ目の速さには目を見張るものがあり、その独特なテンポでスルスルと前を向いて敵陣深くへとボールを運んでいく。その確かな技術を目の当たりにした私は、同じプレースタイルで欧州フットボールを席巻した若かりし頃の香川真司に影を重ねていた。

香川真司といえば1.5列目の選手として相手の最終ラインとボランチの間、所謂「間受け」を得意とし、素早いターンと高速ドリブルで決定的な仕事をする、稀代のシャドーストライカーだ。

ハサのプレースタイルもそれに近いものがあり、この左サイドからアシストを記録したシーンを見ると、サイドの局面での一対一において、一瞬のスピードで相手を外し、利き足とは反対の左足で高精度な柔らかいクロスを供給している。ハサと香川の特徴がよく似ていることが分かるシーンだ。


こうした技術が高次元で絡み合い冒頭のスタッツを残しているのだが、彼の場合はよりマルチロールが可能なタイプのようだ。
U-19欧州選手権では、シャドーストライカーの他、攻撃における経由地点、リンクマンとしてのプレーを見せたかと思いきや、サイドに張ってチャンスを演出するサイドアタッカーとしてプレーする場面もあった。

これはチームが彼に自由を与えている結果だろうが、少なくとも彼自身にそのポテンシャルが無ければ不可能な話だろう。
やはり、同世代の中ではポテンシャルが群を抜いているのだ。


今後のキャリア

そんな才能溢れるダイヤの原石だが、今後のキャリアについてどう考えているのだろうか。昨今の移籍市場の動向から考えると、シャビシモンズのように高額なサラリーと新たな環境を求め、若いうちから他のビッグクラブに移籍することも十分あり得る話だろう。

しかし、本人はこう語る。


「僕の一番の夢はユベントスの一員としてセリエAでプレーすることなんだ。それが唯一、僕の頭の中にある人生のゴールなんだ。ユベントスは2つ目の家族であり、ここで育った僕はそれを叶えたいと思っている。いつかユベントスのユニホームを着てデビューする日が来ることを願っているよ。」


果たしてNextデル・ピエロは、クラブを象徴するレジェンドプレーヤーと比肩する領域まで成長曲線を描いていくことができるだろうか。―それとも。

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