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Maybe metaphors

声を吹きこんで。
耳を傾ける。
こんなのはあたしじゃないと。
削除して何もなかったことにする。

鏡を覗きこんで。
目を凝らす。
こんなのはあたしじゃないと。
背を向けて見なかったことにする。

日々を生きるごと。
嫌でも気づかされる。
こんなのはあたしじゃないあたしこそあたしでしかないと。
初めからいなかったことにしたい。

もっと愛らしく。
もっと穢れなく。

もっと聡明で。
もっと勇敢で。

もっと才気にあふれ。
もっと自信にみちて。

目を開けるたび。
目を閉じる前から。
引き継がれた現実を憂いて。
非現実で合成した理想像を崇める。

ねえ。
どうやって。
架空の物語のように。
都合よく願いが叶うなら。

高く。
円を旋らせながら。

遠く。
祈りを捧げながら。

これは多分そんなメタファー。

『壊れかけの自動錠、
 歪曲した水晶、
 ぶつかりあう微小の独楽、
 この空の形、
 眠りについた後の雨音、
 揮発性を有する渦、
 手のひらよりも小さな紙片、
 忘れ去られた極彩色、
 望遠鏡に引き寄せられた満月、
 絵葉書にも代われない羽』

意識をいくら変形させたって。
触れられないなら意味はない。

非力をいくら取り繕ったって。
今に会えないなら意味がない。

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