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墓じまいラプソディ_20240630

タイトルを見て、直感的に面白そうだなと思って借りてきた本を読了。

主人公は成人した二人の娘がいる主婦、亡くなった良妻賢母だった夫の母親が、病床で娘(義姉)に「家の墓に入りたくない」と切望し樹木葬にすると約束、残された父親がショックを受けるだろうと夫に相談するところから話が始まり、そこから実家の墓の今後や、娘の婚約者の家の墓の話、夫婦別姓の話など、墓をきっかけに家をめぐる様々な問題やそれに縛られた人々の葛藤が描かれています。

主人公は一応いますが、登場人物それぞれの視点で描かれており、読んでいて飽きないし思わず共感してしまう部分も多かったです。
そして、文中で住職が述べる「色即是空」が本質を捉えている言葉だなと、仏教(っていうか般若心経)スゲェなと感嘆してしまいました。

この本を手に取った動機は、つい先日うちの両親が実家の墓じまいをしたからです。
長男の嫁として実家の墓を守り続けた母は、子どもたちに墓守で苦労させたくないと、自身は樹木葬にすると以前から決めていて、さらに現存するお墓を永代供養に切り替える手続きを済ませてくれました。
都会(といっても府中ですが)の公営墓地だし、お寺さんとの付き合いもそこまで深くないので、この本で出てくるような法外な離檀料を請求されることもなかったですが、遺骨のなくなったお墓を撤去して自治体に返すコストはそれなりにかかります。
それでも、先見の明をもって行動に移してくれたことに感謝しかないですね。

実家に帰っても仏壇もなくなってしまったので何となく違和感がありますが、これも慣れなんだろうし、すでに鬼籍となっている祖父や祖母、そして遠くない将来にお別れをしなくてはならない父や母という存在は、お墓という装置がなければ思い出せないようなものではなく、自らが望むならいつ何時も傍にいてくれる存在だと思いたいですね。

本作のエピローグでは、選択式夫婦別姓の法案が通っていたのが救いですが、実際の世の中の変化に対する抵抗感はすさまじいのでまだまだ道半ばな気がします。
でも、たいした歴史もない「家」制度にこだわり続けた保守政党やそれを黙認し続けた親世代も含めた国民全員が生み出したのが「少子高齢化社会」なので、どれだけ心は抵抗しても実質が伴わない現状では、良し悪しの問題ではなく、維持できなくなるという現実的問題からなし崩し的に認められていくんでしょう。

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