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方舟を燃やす_20240531

新聞の書評欄で興味を持った角田光代氏の長編小説を読了しました。

著者へのインタビューによると、この長編小説のテーマは「デマ」から始まったようで、登場人物2名がそれぞれ生きる時代にも「ノストラダムスの大予言」や「コックリさん」などの典型的な都市伝説が登場したり、「オウム真理教(地下鉄サリン事件)」や「マクロビオティック」のような偏った信仰が絡んだり、さらにはコロナ禍のワクチン騒動に絡む陰謀論やそれよりずっと前にあった子どもへのワクチン接種への抵抗感なども物語の根幹を形作る要素となっています。

この物語を読んでの素直な感想は、「人が何を信じるか(≒何に騙されるか)は、その人の人生(家庭環境・社会背景)が大きく影響する」という至極当たり前のことでした。
そして、真面目な人(ちゃんと考えてる人)ほど偏った思考に囚われやすいのだと改めて感じました。

タイトルになってる「方舟」は旧約聖書の「ノアの方舟」から取られたもので、ご存じのように堕落した人類を滅ぼすことを決めた神が、信仰心の厚いノアさんに方舟作って家族と動物のつがいを乗せたら助けてあげますよと言って、その通りになったよというお話ですが、これも信じる者は救われる的な思考であまり好きではないですね。

宗教(信仰)っていうものは、結局人類全てを救うことはまずなく、その宗教を信じる人しか救わない、あとは死んでも構わない的な考えが根底にある気がして、それはオウム真理教だろうと統一教会だろうとイスラム教だろうと変わらない要素なんじゃないかなぁと思う次第です。

宗教に限らず、自分たちが持つ規範やマイルールなども上記のような「自らが信じることの大切さ」を協調してきますが、僕らはそんな「自己中心的な思考(信仰)の方舟」に閉じこもって難を逃れることを選ぶのではなく、方舟を燃やして(=自らの信じることを疑って)外界の嵐の中で改めて自らを客観視していくことが必要なのかもしれません。

そうは言ったって、結局何かにすがってしか人間は生きていけないのだけど・・・

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