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人間はどこまで家畜か 現代人の精神構造_20240521

新聞の書評欄に掲載されていて、タイトルに惹かれて図書館に所蔵してもらった新書を読了しました。

生物が進化の過程でより群れやすく、より協力しやすく、より人懐こくなるような性質に変わっていく現象を「自己家畜化」と呼び、イヌやネコがその代表例とされています。

我々人類もその歴史の中で自己家畜化が進んでおり、それが今日の繁栄の礎となっているそうで、粗暴だった祖先が生物学的進化の過程で、他の動物のように不安や攻撃性に駆られることなく暮らすようになり(生物学的自己家畜化)、さらに社会規範に適応していくことで、集団生活の中でルールを守って安全で便利な生活を手に入れた(文化的自己家畜化)ことは、自己家畜化の賜物だそうです。

一方で、この文化的自己家畜化が進むことで生まれた変化についていけない人々もおり、そうした人々が精神疾患や発達障害の増大につながっていると精神科医の著者は述べています。
ひと昔前ならある程度社会が許容して受け入れてきた人であっても、何らかの病名をつけられて精神科医療のお世話にならなくてはいけない世の中になってきている根源には、このいきすぎた文化的自己家畜化があると主張しているわけです。

こうした風潮がさらに進むと、社会規範に適用しようとするあまり、精神疾患や発達障害の有無に関係なくエンハンスメント(本来は病気や障害の治療のために開発された医学的な技術を、能力向上の手段として用いること)を積極的に行う未来がやってくるのではないかと述べ、ディストピア的な近未来予想図を書中で展開しています。

確かに、ドラえもんののび太やジャイアンは現代社会ではちょっとアレよね・・・と言われてしまう感じですし、そうやって人々を分類・区別することでより社会が安心を得ようとする雰囲気は感じます。
また、著者の近未来予想図で示された少子化の行きつく先などは、動物的な性交も育児もコスパやタイパが悪いから不要なんて考えの一端もすでに垣間見えていることから、このまま遺伝子工学の進歩が続けば確実にやってくるのではないかと頷いてしまいます。

ただ一方で、どこまでいっても人間が持つ動物的側面(残虐性も含め)は失われないのではないかと、昨今の紛争とそこで繰り広げられる惨劇を見聞きするたびに思ってしまうのは私だけでしょうか。

そのあたりは、自己家畜化を取り扱った他の本も読んでみたいところで、ググってみたところこちらの書籍が理解の一助になりそうです。


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