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ユーチューバー_20230621

読み終わった村上春樹氏の本を返却しにいったら、図書館の新刊コーナーに雑然と並んでいた装丁が真っ黄色の本。思わず手に取ると村上龍氏の新作らしい。

春樹が理解できなかったから龍ならわかるかも・・・春樹本は分厚かった(650ページ程度)けど龍本はペラペラ(170ページ程度)だからサクッと読めるだろう・・・なんて思って手に取りました。

村上龍氏の作品はもしかしたら1冊くらい読んだことがあるかもくらいの感覚ですが、記憶に残っていないということは読んでないのかもしれません。

物語は4章立て、表題の第1章「ユーチューバー」は書下ろしらしく、それに続く3章はそれぞれ文芸誌に掲載されたもので、2(題名:ホテル・サブスクリプション)→3(題名:ディスカバリー)→4(題名:ユーチューブ)→1章という流れっぽいですが、各章語り手の目線が違うので一瞬混乱しました。

コロナ禍のホテルを舞台に、老齢を迎えた人気作家「矢崎健介」とその恋人(50代)、そして自称世界一モテない四十男がからんで、矢崎健介がその女性遍歴を語る動画をYouTubeで配信するという話。

矢崎健介は村上龍氏本人で、物語中で語られる「The 昭和」な感じも相まって、村上龍氏自身の恋愛遍歴を語った私小説的なものかなと思いましたが、東洋経済オンラインでのインタビューによればどうもご本人はそうではないとおっしゃっているようです。
ただ、「ヤザキケンスケ」という人物は分身的にいろいろな作品に登場しているんですね。

結果、村上龍氏の作品の初読として本作品を読むことは大失敗だったようです。
面白いとかつまらないとかいう感想をいう以前に、読む土俵に立っていないということを思い知らされた感はあります。

やっぱり代表作である「限りなく透明に近いブルー」「コインロッカー・ベイビーズ」などを読まないと、この作品を「村上龍も老いたね」とか「自由・希望・セックス、まさに村上龍だね」みたいな感想も言えないってことで。

1つだけ思ったことは、YouTubeというプラットフォームに対して結局「過去」でしかないから飽きると言い切ってますが、それはYouTubeを巨大なアーカイブ倉庫としか認識していないからであり、他の動画配信プラットフォームに追い立てられたとはいえアーカイブログから多少は脱皮しつつある現状を踏まえて欲しい部分はあります。

ただ、タイトルとして使っているにもかかわらずYouTubeというプラットフォームが重要視されていないので、村上龍氏にとってはどーでもいいことだったのかもしれません。

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