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もっと悪い妻_20231213

ジャケ写とタイトルに惹かれて借りた本を読了。
作者の桐野夏生氏は言わずと知れた日本ペンクラブの現会長で、「東京島」や「日没」などディストピア系の小説が好きでよく拝読いたします。

今回は、6作の短編が収められており、手軽に一気に読み終えました。
それぞれの作品については、結論などないある意味中途半端かつどちらかというと後味が悪い終わり方をしていますが、全体を通しての読後感は、これだけ多様性の時代にあっても世の中のベース部分でしっかりと残っている「良妻賢母」的な価値観がいかに脆弱で現実味のないものかということを様々なケーススタディを用いて教えてくれているといった感じでしょうか。

特に印象に残ったのは「武蔵野線」のラストシーンで離婚した妻と連絡を取った時のオチの部分で、取り残された夫の悲哀をこれでもかと感じさせられるシーンでした・・・

女性がこの作品を通じて男女の関係をどうとらえるのかは男性である私にはわかりませんが、男性である私にとってはどこかで否定しながらも自分の深層心理にこびりついている「こうあるべき」的な価値観にハンマーが打ち下ろされたような感覚でした。

かといって、タイトル作「もっと悪い妻」のような、ある意味隷属的な関係に陥りたくないですが・・・

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