「おかえり」と言える、その日まで―山岳遭難捜索の現場から―_20231001
最近読んでいた新書がどうにもこうにも面白くなくて(テーマは面白いのですが、書きっぷりが興味を惹かせてくれず・・・)、1ページ読むだけで睡眠に誘ってくれる状態だったため、読了をあきらめて図書館に返却しにいった時に手に取った本です。
国際山岳看護師の資格をもち、民間の山岳遭難捜索チームの代表を務める著者による捜索エピソードが6編おさめられています。
どのエピソードも山で行方不明になって、通常の捜索が打ち切られたあとに相談に来た事例で、最終的にはご遺体を発見することになるのですが、そこまでのアプローチの仕方が「山」そのものではなくそこに登る「人」に焦点を当てているというのが新鮮でした。
山を熟知した側の人間は、ともすればプロ目線で遭難しやすい場所として一般論的に決めつけてしまう傾向がありますが、登る人がどんな人間なのか、その人物像のプロファイリングをもとに登攀中のその人の判断をトレースしていくという著者のやり方はとても新鮮ですが、一方でプロファイリングのために残された家族から話を伺うにも信頼関係の構築が必要であり、膨大な時間がかかるものでもあるのが現実であり、これが正解というものでもないのだと思います。
なお、著者へのインタビュー記事があったので、シェアします。
普段から山に登る自分としては、非常に身につまされるエピソードの数々でした。
確かに、山で道をロストしかけたとき、正常性バイアスがかかって判断を誤ってより悪い方に進んでしまうこともあり、結果的に生きているだけで、一歩間違えれば低山であってもこの本のようなケースに陥る可能性があることを思い知らされました。
ということで、対岸の火事とせず、他山の石として戒めなくてはいけないと思いました。
少なくとも、1日掛け捨ての登山保険にはどんな山に挑むにしても加入します。
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