牛深に帰るのは、月夜と決めていた
夏休みの朝、5時台に家の電話が鳴る。母が飛び起きて、ばたばたと受話器を取る。奥でガガガと船の機械音と共に荒っぽい父の声が漏れ聞こえる。母が到着時間と何箱かを確認する。嫌な予感がしたので、瞼をきつく閉じ、最初からそうだったように、寝たふりをする。母が私と妹を揺すり起こす。諦めて起き上がり、「大漁?」と聞く。聞かなくてもわかっている。大漁なのだ。朝から最悪の気分だった。
汚れてもいい、というか、すでに魚の染みができている服に着替えて、バケツと子供用の軍手を両手に持ち、長靴を履い