SS サイコの鶏唐#毎週ショートショートnoteの応募用
「サイコの鶏唐? 」
俺は馬居望男、食い物のライターだ。立て看板に鶏唐メニューがあるが、サイコが意味不明だ。
下町のよくある洋風のレストランは昭和風でレトロだ。昼時の鶏唐定食を食べるサラリーマンが多いのだろう。すでに十五時で店内はガラガラだ。
「サイコの鶏唐を! 」
元気よく注文すると、飲食店にしては前髪がやたらと長い女給さんが来る。
「サイコ一人前……」
かすれた声で厨房に注文を繰り返す、厨房の中にはおかっぱの女性が満面の顔で笑っていた。いや凍り付いた笑いは恐怖すら感じる。
(サイコ……まさか別の肉なのか!)
ドイツでも中国でも、○肉を使った事件がある。俺は昭和風のタイル張りの床すら、ホラー映画の舞台に見えてきた。
「おまちどうさま……」
出された料理は、普通の鶏唐だ。横でじっと見守る女給が帰ってくれない。俺が食べるまで監視する気か!
ハラを決めて鶏唐を箸で解体した、中身は普通だ。俺はうまそうな匂いに釣られて食べてしまう。モグモグごっくん。美味い、白米、鶏唐、白米、鶏唐リズムを刻むように完食する。俺は金を払いながら聞いてみた。
「おいしかったです、あの……サイコってなんですか?」
「彩子さんの絶品料理です」
貞子のように長い髪の毛の間から、かわいい顔が笑っている。
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