SS 占い師マイカの毎日:獅子2【ワールドザワールド】
あらすじ
平行世界に含まれる大樹の世界で占いの店を経営するマイカ。異世界のカードは絵のシンボルが実体化する特別な物だった。女神候補のヒサギの家に行くと、狐耳の少女が鍛錬をしている。突然に出現した【力者】のカードの女性は、愛娘と力比べをする。
【力者】はライオンの頭をつかみ力を入れた。さすがにライオンがかわいそうだ。私が止めに入るとタロットカードから出現した女性は、ドレスをなびかせながらくるりと振り向いた。
「ライオンはきちんと躾けないとだめなんですよ」
躾けるも何も彼は元から従順で臆病に見えた。ライオンの方は頭をふりながら
「いつもの事だ、気にするな。カードに居る時はずっとつかまれたままだ」
カードの絵柄は象徴だ、誰かを傷つけたり苦痛を与える意味ではない。それでも実体化するとカードの住人達に人格が与えられる。ライオンが気の毒に感じる。
「あんた、めっちゃ強いね」
愛娘は、【力者】の女性に近づく。不思議そうな顔で私を見た。
「マイカ、この子は人じゃないよね?」
鋭い。まぁ格好からしてワールドザワールドの世界の住人ではない。ヒサギも話の輪の中に入る。
「みんなでお茶にしましょう」
台所でお茶を飲む。ライオンは飲まないと言う。【力者】の女性はお茶を口にして喜んでいた。
「おいしいと感じるのは新鮮ですね」
人格を得た事で五感も得ていた。
私はお茶を入れているヒサギを見ながら質問する事にした。お客様の今の経済状態を知りたい。占いの値段も無料ではない。ヒサギの両親は金持ちで商売していた。元はお嬢様だ。今は大樹の女神から認められた女神候補として生活している。つまり無職だ。
「貯金とかあるの?」
ヒサギに興味本位で聞いてみる。
「蓄えがあります。今は大樹の女神様のお手伝いをすると少額のお金が貰えます」
ヒサギはそれで十分に暮らしていける。愛娘が
「私もちょびっとだけ貰えるよ、本当に少ないけどね」
不満を漏らす彼女は衣食住をヒサギに頼っている。
私は
「それで愛娘は何を悩んでるの?」
ヒサギの家に来た理由を聞いた。要約すると愛娘は祠の封印を解く事で道を開きたい。簡単に言うと強くなりたい。
「祠に行くと強くなるのね?」
「祠に居る魔物を倒すと報酬をくれるの」
愛娘はヒサギの作った饅頭を食べながら腕を振り回している。危ない。乱暴な娘で仕方が無い。
「私が力を与えましょう」
【力者】のカードの女性が愛娘にうなずく。
「えー?本当?やったね。いつからいける?」
【力者】のカードの女性が私を見る。
「マイカさんと一緒に行くことになります」
「へっ?」
私は驚く。私は荒事が苦手だ。冒険をしたことがない。街で占いをする娘だ。
「カードを受け取った人とは離れられません。マイカさんと一緒なら愛娘さんの手助けが出来ます」
愛娘が私を見ている。視線が痛い。見過ぎだ。
「判ったわ、どうやって行くの?」
愛娘に根負けして話を聞くと、大樹に昇り試練を受ける事で強くなる。女神の試練と同じと聞いた。
「ヒサギも行くよね?」
「いいですよ。マイカさんを護衛します」
ヒサギは余裕そうに見える。軽い山登りに感じた。後から後悔する事になる。
続く