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SS 占い師マイカの毎日:女祭司長【ワールドザワールド】

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あらすじ
平行世界に含まれる大樹の世界で占いの店を経営するマイカ。異世界のカードは絵のシンボルが実体化する特別な物だった。愛娘 アイニャンが力を得るために大樹の挑戦を行う事になる。【力者】のカードの女性は、私たちをサポートすると約束をする。

私は自分の店に戻る事にする。愛娘 アイニャン達は大樹の試練のために女神と相談をする。私は挑戦の時期までは待機になる。私が愛娘 アイニャン達と離れる事でタロットカードの【力者】は鞄に戻る。

「冒険ね……私らしくは無いわ」
なにしろ市場まで買い物するのも億劫だ。ずっと家に居たい。私は占いの店まで戻る。扉を開けて客用の長椅子に座る。少し歩いたから腰が痛い。運動不足だ。

「椅子に座るだけの生活じゃダメね、歩かないと」
長椅子で横たわる。鞄がまた動く。白い服に包まれた黒髪の女性が立っている。またカードから人が現れた。私は起き上がると彼女は私の横に座る。

彼女はだるそうに
「疲れた……」
私が不思議そうに見ると自己紹介を始めた、自分は女祭司長で、私を選んだ人に満足を与えるための存在だと。今は何か不満げに見える。

「何が疲れたの?」
「ねぇ聞いてよ、もう本当に嫌になるわ」
【女祭司長】はグチを延々と語り始めた。この世界に来てからカードは自分勝手に動き始めた。選ばれる存在なのに自分たちから相手を選び影響を与えようとしている。

力を持つカードは良い影響も与えるが悪い影響も与える。選ばれている場合はまだ良い。選択をした側の判断で運命を変えられる。選ぶ方になれば責任の問題もある。

影響を与えて悪い方向に転べば自分たちが悪い事になる。誰が責任を取るのか?カードをとりまとめる人が居るのか?合意は形成されているのか?問題点は山積みだ。

私はあわてて遮る。
「待って、あなたたちがこの世界に来た理由は判らない、でもね、人格を持って誰かの手助けを出来るなら良い事よ」

【女祭司長】は私をジロリと見る。
「悪魔とか居るんですが?」
確かにカードの絵柄を見ている時に、悪意を持つカードがあるのは確認した。カードに善悪があるのは普通に感じる。もし暴走するなら私の世界のカードで止められる。

「カード間では力の干渉はしないんだ?」
もし善悪があるなら力は拮抗する筈だ。ただ内紛のような形で暴走が始まるとカードの力が薄まる予感もある。【女祭司長】はぶつぶつと何かつぶやいている。やけに後ろ向きなのが気になる。

「ねぇなんでそんなに悲観をするの?」
「私が今は逆位置だから…」
【女祭司長】は無神経に私に言い放つ。カードの位置で意味が逆転するのは私の世界でも同じ。結局は正邪も表裏一体でしかない。良い事と悪い事は混じるものだ。

悲観したから何が悪いのか?悲観したいなら飽きるまで悲観をすれば良い。いつか前向きになると私は考えた。それは、ほんの少しのタイミングで変わる。だから悲観してもいいよと【女祭司長】を慰める。

彼女は何か納得したかのように私を見る。ゆっくりと微笑むと
「そうね、別に神経質になることないわ」
無気力そうな彼女は元気を回復する。喜びながら鞄に戻る。

「今の助言で良かったのかしら……」
私はいつもの占いみたいに出来ない事が不安になる。翌日になると準備が終わり大樹へ向かう事になる。みなが前向きだ。悲観は誰もしてない。

続く

女教皇



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