創作民話 悪徳お姫様は吸血鬼に狙われる5

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「ここがあなたの部屋です」
ベッドと机と椅子があるだけの質素な部屋を見る。
「食事は鐘がなりますので、食堂に来てください」
案内した尼は戻る

「いい部屋ですね」
専用メイドのアメッタ(吸血鬼)も一緒に尼寺に入った。
便宜上は私の付き添いになる。
「あなたは何しにきたの?」
最初から尼寺の女性を狙う気なのだろうか?

「あなたが心配なのです、不幸が重なっている」
確かに吸血鬼に襲われるわ、夫が連続で死ぬわで
ひどい状態。

「もう夫を持つ事はないです、貞潔を守る身ですから」
部屋に入るとベッドに座る
硬い、まるで板のように硬い。
眠れるのか心配になる。

「そういえば、吸血鬼は神様は怖くないの?」
神聖なシンボルを恐がりそう。
「・・そうですね、怖いのは信仰心かな」
ヴァリアは言葉を濁した。

鐘がなる、私たちは食堂へ向かう。

「遅い、鐘がなる前に座りなさい」
管理をする尼僧だろうか?上位の尼僧が怒鳴る
「鐘が鳴ってから来るようにと・・」
「私は管理している、ザリアです
 いいわけは許しません、あなたに後で罰を与えます」

席に座ろうとすると「夕飯はありません、そこに座りなさい」
憤怒の形相で部屋の隅を指をさす。
尼寺の石の床に直接、お尻をつけて膝を抱えた。
アメッタも一緒に座る

みなが食事を終わっても放置された。
他の尼僧が寝静まった頃に、数人の供を連れて管理者のザリアが来る
「立って私の所に来なさい」

しびれた足でやっと立つと、よろよろと歩く。
「ひざまづきなさい」
彼女の前で膝で座ると、またしびれてくる。
血行が悪い。

「尼寺では清貧・貞潔・従順が基本です
 ここでは身分はありません、わがままな娘は、罰を与えます」

管理者のザリアは、供に合図をした
革のムチが取り出される、硬くまっすぐな棒状のムチは先端に
ギザギザな突起がついている

供の2人の尼僧は私の両腕を掴むと、両側から引っ張る。
「痛い、やめて」
肩が抜けそうな力だ

ザリアはムチを持つと私の背後から力を入れて叩く
肺から空気が抜ける、激痛より息を吸えない苦しさが勝る。
「姫だろうが関係無い、高慢な鼻をへし折ってやる」
呪詛のような言葉を吐きながら叩く。

私は姫として生まれても、幸せを感じない
他人から見れば幸せなのだろう
実際は規則が多く自由な時間は持てなかった
そして若いうちに、貴族と結婚させられる
道具でしかない人生が、うらやましいのか

私が数回打たれた所で、背後から叫び声がする
首だけで振り向くと、尼僧のザリアは腕をへし折られていた。
吸血鬼はムチを取ると顔めがけて振り抜いた。
顔半分が吹き飛んだザリアは大きな音を立てて倒れる。

両腕をもった尼僧は腰が抜けたのか動けない
二人とも首筋を噛まれると血を吸われた。

「ヴァリア、もういいわ。私の血を全部吸って殺して」
もう行くところもない。
「大丈夫、尼僧の一人をザリアに変身をさせる、
 死体は始末しよう、私が結婚できる歳になるまで
 ここで暮らせば良い」

物陰から見ている尼僧には誰も気がつかない。

「王様、やはり姫様は吸血鬼に魅了されています」
監視役からの報告を聞くと、従者に命令をする。
「吸血鬼ハンターがまだ居る筈だ、呼び出せ」


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