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SS 笑った娘【隔週警察】#毎週ショートショートnoteの応募用

 夜のガードレルに女が座っている。誰かを待っているようにも見える。

「おい」
「なに……」

 男が近づくと胸ポケットから紙巻きを取り出す。女がマッチをすって火をつけた。

「いつまで続けるんだ」
「説教するなら帰って」
「聞いただけさ」
「いつか終わる……」
「文字通りの意味か」
「……」
「なぁ……」
「今日は非番なの」
「ああ……隔週警察さ……」

 深夜に見回り、彼女たちを箱に閉じ込める。そんな仕事だ。

「ねぇ、銃ある?」
「俺にそれを言うのか」
「だって売人のは高くて」
「自殺でもするのか」
「護身用」

 腰をかがめて足首からリボルバーを抜いて渡す。製造番号は削ってある。

「撃てるのか?」
「親父と猟で撃ったことあるよ」

 田舎から出てきた彼女達は、何かに縛られるかのように同じ道を歩む。何十人も見てきた、心は麻痺した。哀れむ心も救いたいと思う心も枯れた。

「なんで泣いてるの」
「泣いてないよ」

 夜の街がぼんやりとかすむ。

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「拾ったと証言したよ」
「そうか、出所したらどうする」
「あんたと結婚してあげる」

 彼女は、そっと面会所のテーブルで男の手に触れる。彼女は縛ってきた男を殺した、そこにいたヒモを全員殺した。出てこれるのは二十年後だ。

「そうだな、年金で暮らせるぞ」
「そうだね、どっかで静かに暮らそう」

 彼女は明るく笑って見せた。

#毎週ショートショートnote
#隔週警察
#小説

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