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SF 先住者
暗く古い屋敷が少しずつ見えてくる。十七世紀の館は大きく広く寒々としている。
(祖父は、こんな家に住んでいたのか……)
遺産の家を見に来ただけだ。売れるかもしれないと淡い期待をしたが、とても住めないと感じる。窓から灰色のカーテンが見えた、少し揺れた気がする。
(ネズミでも居るのか)
ゴミだらけでカビと埃まみれの室内に入るべきか悩んだが、管理人から鍵はあずかっている。せめて入って確認しようと決心した。
重い扉の鍵穴に、鉄さびだらけの鍵をさしこみ回した。なぜか心が温かくなる。
ドアを開けて屋敷に入ると大きな階段が正面にある、そこに人が立っている。心臓が高鳴る、泥棒だろうか? それとも屋敷を管理している住人だろうか?
ゆっくりと階段を上ると使用人だ。執事とメイドが頭を下げる。
「お帰りなさいませ」
「この屋敷を管理しているのですか?」
「あずかっております」
彼らにもてなされ、夕食に満足して寝室に案内された。居心地のいい館だ、ずっとずっと住んでいたい……
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「それで青年が戻ってきてないと」
「この屋敷です」
村の警察官と老いた管理人が館に踏み入ると毛のないおおきなネズミが玄関で寝ていた。警官は恐怖から拳銃で殺してしまう。
検視の結果、歪んだ背骨や皮膚はネズミにも見えるが人間だ。ただ顔つきはすっかりネズミに変わっている。青年はどこにもいない、館には多くの家ネズミが歩き回るだけ……この生物は浮浪者と判断されて今は墓地で眠っている。
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