SF 映画館
古い無声映画を見る。音の無い映画はBGMはないので、ひたすら画面に集中する。
内容は女が男に追いかけられる話だ。執拗に恋人にしたい男は、女を部屋に閉じ込めてしまう。よくある展開だ。
だが男は何かの理由で死んでしまう。部屋に戻れない。路上に男の倒れている手が見えるだけ。
女は男の帰りを待つしかない、飢えと恐怖でしだいに冷静さを失う。極限の彼女は、出られない部屋をさまよう。
いきなり映画が途切れた。
フィルム映画なので切れてしまう事もあるので黙って座って待つ事にした。だがいつまでも始まらない、不審に思いながらも立ち上がると、腕をひっぱられた。
女が自分を見て座るようにジェスチャーする。そうだ、この無音の世界では、音なんてない。俺があの男を殺して、彼女を救った。俺と彼女は相思相愛だ。映画はハッピーエンドで終わる。
どこかでカラカラとリールが回転している。
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