SS 幽霊の恩返し【#墓参り】#ボケ学会のお題
墓参り、昔からある風習に思えますが町人だと墓石なんて買わないで卒塔婆だけで終わる事があります、土饅頭に長い板を突き刺して終わり。簡素なもんです。
「八さんや、墓参りに行こう」
「墓参り? 熊の墓を見るのか?」
「違う違う、有名人の墓を見て掃除するんだ」
「なんでそんな事をする」
「ご利益があるんだよ」
どこで聞いたか墓を掃除すると恩返しがあるらしい。
「近所に石川五右衛門の墓あるんだ」
「聞いた事ねえな」
「最近できた墓地なんだよ」
「大公様の頃に死んだのに、なんで最近なんだよ」
ぶつぶつ言いながら新しい墓地にいくと、入園料十文と書いてある。
「八さん、金出して」
「墓みて掃除して金までとられるのか」
「まぁいいじゃねえか、御利益御利益」
「本当に御利益あるんだろうな」
疑わしそうな八さんと嬉しそうな熊さんが、墓地を見て回ると新しい墓石がある。
「これは新しいね八さん」
「えーと年が十六で娘か、かわいそうに」
「よしここ掃除しよう」
「石川五右衛門を掃除するんだろ」
「十六歳がお礼に来るんだぞ、こっちが優先だ」
すけべえな事を期待して、墓石のまわりの雑草を抜いて、手ぬぐいで墓石をピカピカにした。そのまま夜中まで家で酒を飲んでいると、玄関が叩かれる。
「もし、墓を洗ったのはあなたですか」
若い女の声だ。
「はーい、そうですよ、磨きましたよ」
「本当に来るんだな」
戸締まりのしんばり棒を取って引き戸を開ける。わくわくしながら見てみると、しゃれこうべが立っている。
「ぎゃー、なんで骸骨」
「みんなが墓石を熱心に磨いてくれるので、肉が落ちました」
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