SS 無敵の少年【雪解けアルペジオ】 #毎週ショートショートnoteの応募用(450文字くらい)
一人の少年が遠くから進軍する魔王軍を見つめる。
「とうとう来たんだ……」
何もできないただの子供、何もできない男の子。そっと寄りそうように少女が隣に立つ。
「僕だけでいいよ」
「いいの、もういいの」
村の大人は、みんな魔王の討伐に狩り出されて死んでしまった。村に残ったのは老人と子供だけ。
「僕は歌うんだ」
「私も歌うよ」
男の子は詠唱をする、小さな声は聞こえない。唱和するように少女も歌う。子供ができるたった一つだけの力。
徐々に分散和音が重なり、高く高くとても高くなる。息が上がる、空気が欲しい、涙を流しながら少年は音域を高くする!
「糞ガキしかいないのか!」
魔物が降り立つ、少年と少女に巨大な斧を振り下ろす。ガッンと音がすると斧がはじけ飛ぶ。
「プロテクトか! ガキが味なまねを」
神聖魔法は無敵の防御魔法、音を重ねて敵をはじく、無敵の防御魔法は……少年を岩にした。村を守るための絶対の障壁ができる。
雪解けアルペジオ、少女は毎朝のように少年に歌を聴かせる。きっといつか、彼は元に戻ると信じて……
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