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SS 祖母 猫探偵14

あらすじ
 奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。ニーナが生きていると障害に感じる親族は彼女の命を狙う。捕縛されたロイはカラス男に尋問されている最中に、思考戦車に助け出された、猫探偵は主犯の館に突撃する。

 既に警護のロボットは全滅させていた。邸内に残っている有人の警護は存在していないか、逃げていると思う。庭先で思考戦車が大暴れしている、並の人間なら雇い主を見捨てる。

 黒豹型のロボットは足取りが重く三階に昇る、そこにはニーナの祖母のメリル・エリザベス・ウッドが居る。ニーナを狙う親族は、混乱を恐れているのかもしれない。ニーナが生きている事で、彼女を利用してセキュリティを破られる可能性もある。

「自分の孫だろうが……」
 カラス男との戦闘で脳細胞が一部を焼かれていた、俺は頭痛と吐き気でフラフラになりながらロボットに命令する。祖母の部屋の前に立つと、セキュリティが緩いのか、ドアは開いた。

 ニーナが立っている。ベッドには祖母なのか老女が死んでいた。頭に鉛玉を喰らっていた。

「ニーナか? 」
 だがあり得ない事を知っている、ニーナはネズミ達の避難場所に居る筈だ。

「探偵さんね?もう終わったわ」
 彼女はニーナの複製品、いや本人かもしれない。クローンで分離した彼女達は、どちらが本物か誰にも判らない。

「公園で会いましたね」
 俺が彼女達の始末の為に雇われたが、彼女達に命運を決めさせた。結果が今の状態だ。

「祖母を殺したのか? 何故だ? 」
「――彼女は私の肉体を欲しがったの」
 薄く笑う彼女は、自分たちはパーツだと教えてくれる。ニーナが複製されたのは偶然ではない。孫娘のパーツが欲しかった。祖母は補助脳を作らずに、自分の臓器をパッチのように入れ替えながら長い年月を生きてきた。新鮮な肉体のパーツは常に欲しかった。

 今回の失敗は、孫娘のどちらかを麻酔で眠らせなかった事だ。祖母も脳機能が低下していた。指示が甘かったのか、ニーナ(複製?本人)は始末できずに逃げ出して公園に隠れていた。

「私の臓器が欲しいと言われたわ、体を機械にすれば生きられるのにね」
 祖母が機械の体を使わない理由は、魂がある場所は一つと感じたのかもしれないと、彼女は寂しそうに語る。

「あなたの所に居る私に会いたいわ、一緒に暮らしましょう」
「後で連絡する、俺は戻る」
 彼女は、俺の所で暮らしているニーナと幸せになりたいと強く願っていた。俺はふらつくロボットの体を操縦しながら街に戻る。


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