SS ラーメン部骨伝導 #毎週ショートショートnoteの応募用
俺はマイナーグルメオタクの馬居望男だ。
「ラーメン部骨伝導会、一つ、丼の汁は全部飲む!」
「全部飲む!」
年四回の活動しかないが、大衆食のラーメンを楽しむ会に参加している。部長は古来の応援団のように背中に手を回し、ラーメン部骨伝導会の鉄則を叫ぶ。近所迷惑というか通報レベル。もっとも俺を含めて四人しか来てないし、腹も出てる。
「一つ、私語は厳禁」
「厳禁」
なんで細かいルールがあるのか? 単純だ。店でマイナールールが多い。最近では未成年お断りすらある。マナーが悪いのでガキは食うな、みたいな話だ。理不尽にすら思うけど、店主に逆らえば出禁になる。今回は特殊な店らしいので俺は楽しみだ。
「いらっしゃい」
その店は活気があった、いやうるさい。客がしゃべりまくっていた。
「なにしますか?」
中国系の若い娘の給仕さんが来ると、全員がニヤける。袖なしのチャイナ服がかわいい。
「ねえちゃん、ビール!」
「餃子まだ!」
客もうるさいがみんな楽しそうだ。そうだ……昔はこんな感じだった、隣を見ればラーメンを食いながら漫画を見ている奴もいる。今だと出禁レベルだ。
「実は今回でラーメン部骨伝導会は解散だ」
「なんですとー?」
部長の突然の発言に全員が驚きながらも納得していた。最近の風潮では、店の回転のために長居すらできない。前は食べ終わった後に、味の考察とかできたが今では無理だ。
「部員も少ない事もあるが、ルールが厳しくてな、料理を楽しみたいんだ」
どうやらここは、出禁されたグルメ達が集まる店らしい。だからみんな適当に楽しんでいる。
「おまちどうさま!」
給仕のお姉ちゃんが、醤油に海苔と半熟卵だけの簡素なラーメンを出す、親指が入ってるが熱くないのだろうか?
「うーん、微妙だ」
「まずくもないが、うまくもない」
「なつかしい」
みながそれぞれ満足する。料理を楽しめない店なんて、俺達には無用だ。
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