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神様になる日 1/4 ワールドザワールド

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あらすじ
女神候補のヒサギは、地下世界と鏡像関係にある迷宮世界で女神として覚醒をする。大人になった彼女は悩んでいた。

私はいつものように台所で朝食を作る。体が大きくなると、食器棚にすぐに手が届くのが嬉しい。ただ体のバランス感覚がまだ馴れない、視点が高いのだ。だから若干ふらつく。今日は愛娘アイニャン の好きな蒸し饅頭にしよう。「おはようー」愛娘が挨拶をする。「地下世界に戻るね。ちょっと行ってくるだけだから」「何かあるんですか?」「なんか師匠が渡す物あるって」愛娘は嬉しそうに朝食を食べると飛ぶように出て行く。名残惜しげに見送ると私は、占い師のマイカさんの所に顔を出す事にした。この体では初めてだ。

道を歩くと街の人が私を見る。狭い街だから見知らぬ人が居ればすぐに判る。少し恥ずかしくなり、うつむいて歩く。占い店の扉を開くと私は声をかける「あの・・」「あら?ヒサギ」と聞いてくる。「・・判るんですか?」占い師マイカは、カードを見ながら「そりゃあ、判るわよ、あなたの事をずっと見てたからね」そうだ両親を亡くしてからは、マイカにいろいろと頼っていた。「なんか体が大きくなってから、来るのが怖くて」マイカは私を見ながら、「そうね、まだ自分の状態に馴れてないでしょ?」私はうなずく、彼女と居ると安心する。姉のような母のような親しみがある。「じゃあ、占いましょうか、今日は特別に無料だから」カードをシャッフルすると、いつものように三枚並べた。「一枚目は、墓場ね・・」墓場の下から骸骨が手を出している。「二枚目は、・・恋人の逆位置」手をつないだ恋人のカードだ。「三枚目は、大樹」少し笑うとマイカは、「ううん、そんなに悪くないかなぁ?、でも多分だけど悲しいことは起きる。そして最後は・・・幸福よ、安定した幸福、きっと幸せね」言葉を濁している。「別れですか・・・」私は冒険者のアイやクァシンの事を考えた。

店を出るとお昼と夕方の食材を買う事にする。「あらヒサギ?」悪意(ワルワル)の女神も買い物中だ。元は大人の女性だが、私のせいで十三歳くらいにしか見えない。買い物かごを持って食材をつめていた、「この果物はおいしいわよ」私に手渡す。「おいしそうですね」「なんか元気ないわね?」市場を一緒に回りながら相談をしてみた「私は・・女神になったのでしょうか?」悪意の女神は私を見ると「問題ないけど?あなたは女神の状態で安定している」と不思議そうに答える。「実感がなくて」私はいきなり大人の体になり、どうすればいいのか判らない。「あんたは、私から神格を奪ってるのよ、だから女神として成立している」悪意の女神は説明をしてくれる「奪われた力を戻す能力が私に無いの」さっきの果物を食べ始める「どうしても違和感があるなら、大地の女神に頼むくらい?」「戻せるんですか?」悪意の女神は私の顔を見ながら「女神になりたくないんだ」と私の手を握る。「女神は絶対の力を得られるわ、長寿と若さを保てる、好きなだけこの世界で生きていける、なにか不満あるの?」手を握りながら歩く。

私は「元はあなたの力だから・・」「ああ気にしているのね。私は今のままでも平気よ、神格は少しずつ回復するし、私は別に使命感とか無いし」半減した力で問題はないらしい。「なんか借りがあると思ってるのならやめてね、私は今は、アイと一緒に暮らしているだけで幸せだから」「・・アイはどうしてます?」ここしばらく会っていない、さみしいかと言われる実はそうでもない。一人で生活するのは馴れていた。「アイは、冒険へ行って帰ってくるの繰り返しね、人から頼まれるとなんでもしている」遠くを見ながら「どちらにしろあの子とは長く一緒に居られない、人の寿命は短いからね、ある程度したら私はあの子から離れるつもりよ」「そうですか・・」「アイは半神だからもしかしたら長寿かもしれないけど、私たちのように力は使えない、いずれどこかの娘と結婚して終わり」食べる所が無い果物の残りを道路に捨てる。「あんたも、その事は承知しなさいよ、人間とは結婚は出来ない、子供も作れないからね」悪意の女神は手を離すと手を振りながら巨大樹へ向かって歩く。

悪意の女神と別れると、とぼとぼ歩く。普通の女の子・・・もう女だ、ならどう生きるのだろうと考える。大樹の女神様に、力を返すべきか相談する事にした。でも私は何をしたいのだろう・・・。女神にはなりたくないのかな。翌日は雨が降っている、雲が低くどんよりとした雰囲気で私は和風の傘をさすと、大樹に向かう。地面はぬかるみ足取りは重く、歩くだけで服が濡れる。「明日にすれば良かったかな」後悔しながら来た道を戻れるわけもなく、大樹の木の入り口から進むと、中で働いている人達が忙しげだ。「いつもと違う」私はワールドザワールドの女神の仕事が忙しいなら、家に戻ろうと考えていると「ヒサギ」と呼ばれる。大樹の女神がこちらに向かって歩いてきた。赤い髪の毛を後ろに束ねて邪魔にならないようにしている。二十歳前後かもっと若く見えるかもしれない。「悪い知らせよ」私は手を引っ張られる。「多元世界の上のレイヤーで大規模な破壊が行われている」私にはどんな状況なのか判らない。「何が起きたのです?」大樹の女神は「神の国が滅んだわ」その時は何が起きるのか私には判らなかった。

続く


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