SS マッチおじいちゃん #爪毛の挑戦状
小雪がちらつく夜の街角で、スカート姿のおじいちゃんがマッチを売っている。
「マッジいらんがね」
野太い声で、歩いている市民に声をかける。もちろん大体の人は、驚いた顔をすると逃げてしまう。老人の頭がイカレていると思われていた。
「マッチくれ……」
「金貨一枚だ」
ぼったくりのような値段でも、太った客は興奮したように革袋から金を出して渡す。
「こっちだ」
「ああ……早くしてくれよ」
暗く冷たい裏路地に、二人で入るとマッチ箱を客に渡す。
「使い切るまでだ」
「判っている」
老人がスカートを、まくりあげる。太った客は、震える手で、マッチをすった。
シュッ
マッチをゆっくりと老人に近づけると……美しい女がスカートを手にもって立っている。太った男は、マッチでスカートの中を凝視した……
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「マッジあるよ、マッジ」
老人のそばにマッチ売りの少女が近づく。彼女のカゴの中にはマッチが一杯、売れ残っていた。
「おじいちゃん、マッチが売れない……」
「……まぁマッチとか売れないからな」
「でもおじいちゃんのは売れてる……」
「固定客がいるからな」
「私はもう寒くて……」
「しょうがないな、俺がマッチを買ってやろう」
「ありがとう」
少女に金貨を渡して帰らせる。家に戻った少女は金貨を見せながら、全部売れたと父親に報告すると、父親は怒って少女を問い詰める。そしてマッチおじいちゃんの場所に案内させる。
「おい、じじいなんだ、この金貨は」
「マッチを買い取ったんだよ」
「馬鹿ぬかせ、お前はうちの娘に何しやがった」
「……お前が売っているのは魔法のマッチなのを知らないのか?」
「魔法……ははははっ、そんなわけあるか」
「なら見せてやろう」
父親を寒い路地に連れ込む。
「このマッチは、こう使うんだよ」
マッチおじいちゃんが、マッチに火をつけると……おじいちゃんは、女に姿を変える。
「幻影魔法だ、このマッチには魔法成分が含まれている。馬鹿な男から金を、巻き上げるのに便利だ」
「お前は……なんなんだ」
「実験でマッチを売ってる技師だよ、お前もマッチを使って俺を見ろ」
マッチを使うと美しい女が見える……
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次の日から、スカート姿の男が二人で立っている。
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