ご免侍 一章 赤地蔵(十九話/三十話)
あらすじ 一馬は、侍と医者の暗殺を頼まれる。謎の男達に襲われていた娘を助けた。
古い寺には変わった老僧が住んでいる。通称で蝮和尚は、強欲と色欲で染まった糞坊主で、近隣の町人からなぜか信頼されていた。なにしろ本音しか話さない。
「あの世なんぞ知らん」
「欲があるのが当たり前だ、やりたいようにやれ」
わからぬものはわからぬ、不便と思うなら念仏でも唱えろ。万事この調子なので、素行が悪いが悪人ではないと思われていた。
「一馬か、埋めておいたぞ」
一馬が懐から紙に包んだ金子を出して渡す。蝮蝮和尚は、それを目の前で開けて確かめる。
「二分銀か、まぁまぁじゃな」
「和尚、聞きたいことがある」
「何が知りたい」
今日は琴音と寺に供養に来ている。彼女はまだ作蔵の墓の前で手を合わせていた。
「夜鷹もここに運ばれるのか」
「ああ、ここは投げ込み寺だからな」
「最近、死んだ夜鷹は増えてないか」
蝮和尚は、眉を大げさにあげて見せた。和尚は知らない。
「なにかあるのか」
「医者が殺された事件がある、夜鷹に薬を渡していた」
「夜鷹が死ぬと赤地蔵の場所に埋めるからな、卒塔婆をみれば判る」
一馬は立ち上がると寺の外に出た。琴音を探しながらなぜ自分が夜鷹の死に、こだわるのか考えている。
(医者は殺された、同心から言われた仕事は終わりだが……)
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