SS ニーナ 猫探偵15 (終わり)
あらすじ
奇妙な機械が歩き回る都市では動物と人間が会話しながら生活していた。人間の娘のニーナを助けると猫探偵のロイは家で飼う事にする。ニーナが生きていると障害に感じる親族は彼女の命を狙う。主犯の館で、クローン(本人?)のニーナが祖母を殺害していた。猫探偵はニーナとの新しい生活のために家に戻る。
「旦那、平気ですか? 」
俺は自宅で寝ていた、最後のカラス男の対決で催眠状態を破るために、クロミが脳へマイクロ波の攻撃をした事でダメージがでかい。
「クロミも容赦しないな、海馬あたりを焼かれたんじゃないのか? 」
二日酔いで頭がズキズキする時と同じ感覚。あれよりも少し酷い。ベッドで寝ながら俺は考える。実家に居たニーナが祖母を殺した、これからはニーナの父母が家の管理? 複雑な権利関係や、同族殺しへの報復の力関係を予想できない。
「旦那、旦那」
ネズミからの暗号無線が来る。俺が預かっていたニーナは、別ルートで地方都市まで移動して田舎に隠れている。国外脱出の前段階だ。一緒に暮らしていたペットを里親に出すような、さみしさもある。もっとも俺と暮らしても命の危険がつきまとう。今回のような荒事ばかりじゃない、彼女を飼っていると俺にも、リスクがある。ネズミは嫌なニュースを伝えてきた。
「ニーナさんが逃げました」
「――逃げた先は? 」
「旦那の所です」
予想を外した。ニーナは古巣を恋しがった。猫と同じだ。住んでいた家に未練がある。
「判った、こちらに来たら確保する、お前らも戻れ」
「了解」
俺はベッドから立ち上がる、ふらふらするがコーヒーを飲めば落ち着く筈だ。粉のコーヒーが無いか棚をかき回す。
「――猫探偵……」
「どうした? 」
ニーナの声がする、俺はふりむかずに棚を探すふりをした。
「どうしてニーナをかくまったの? 」
「あの時は、お前らに決めさせた筈だが? 」
複製を作られたニーナは死を覚悟していた。ニーナは家族に縛られる苦痛にうんざりしていた。重い責務を肩代わりしてくれる自分が居るなら死を望む、どれほどの重責なのか、俺には理解が出来ない。
「――自由が欲しかったのね、そんなものはどこにも無いのに」
重い衝撃音がする、何かを砕く音。俺はゆっくりと振り向いた。私服姿のニーナが立っている、倒れているのはブランドモノを着こなしたニーナ。ニーナは鉄の棒を持っていた、それで後頭部を砕いた。
「おばあさまよ、私の体を使ったのね……」
屋敷で待っていたのは、脳移植して孫娘に化けていたメリル・エリザベス・ウッドだった。彼女は最後の始末をしたかった。全財産を操作できる生態キーを持つ人間が二人居るのは危険だと判断した。
「ロイ、私はどうしたらいいの? 」
泣いているようにも笑っているようにも見える。巨万の富を操作できる彼女は幸福には見えない。俺は小さくつぶやく。
「――猫になればいいよ……」
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大戦の時に人間の脆弱性を克服するために、猫サイボーグ計画が立てられた。猫の頑丈さは他の動物とはケタ違いだ。人の脳を転写して機械脳を猫に移植する。大半の兵士は死亡した、危険で残忍な計画は一部の超猫を作り上げたが、戦争の勝敗には影響を与えない。非人道的な実験は闇に葬られた。
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「ニーナだよ」
老婆が俺に猫を抱かせる。今でも俺をメンテしてくれる技術者だ。彼女に頼みニーナを猫にした。幸せそうに眠るニーナは記憶を取り戻すのか、猫のまま暮らすのか誰にも判らない。
終わり
短編を続きもので無理に作ったので、話がガタガタでした。次は猫探偵2の漫画になる予定。
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